JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2004年05月20日

平成16年度事業計画

平成16年度の日本経済は、企業の生産や設備投資が緩やかに回復するなど、一部に明るい兆しが見込まれるものの、雇用や所得環境は依然厳しい状況が続くと予想される。
そのため個人消費回復に向けた積極的な経済政策を行うとともに、構造改革の一層の推進やより強固な金融システムの構築など、経済の本格的な回復に向けた政府による着実かつ柔軟な政策運営を期待したい。

このような状況下における平成16年度の国内四輪車市場は、新型車投入やモデルチェンジによる市場活性化努力による効果が期待されることから、僅かながら前年度を上回るものと見込まれる。
二輪車については、原付第一種による低価格車効果、また軽二輪車のスクーターモデル需要が増加傾向にあるものの、原付第二種と小型二輪車は前年を下回ることから、前年度を若干下回るものと見込まれる。
輸出に関しては、為替の状況等に依然として不透明要素があるものの、米国経済の堅調な推移に支えられて、引き続き増加が期待される。

わが国自動車産業は、製造・販売をはじめ整備・資材など各分野にわたる広範な関連産業をもつ総合産業であり、日本の経済を支える基幹産業の一つとして重要な役割を果たしている。今後とも自動車産業が健全な成長を持続し、わが国経済の発展に貢献していくためには、世界最高水準の技術力・開発力をもって、「安全」・「環境」といった重要課題に積極的に取り組むとともに、グローバルな視点で絶えずお客様の視点から物事を捉え、そのニーズに的確に応え、魅力的な商品を提供していかねばならないと考える。

当会は、事務所を本年1月より「日本自動車会館」に移転し新たなスタートを切ることとなった。今後は自動車関連諸団体の拠点が集約したことによる各団体間の連携強化や、"総合情報発信拠点"ならびに"自動車関係者の交流の場"として集約効果を充分に発揮し、会員各社の協力の下、迅速な意志決定と透明で効果的な運営に努め、直面する課題に積極的に取り組むこととする。

平成16年度における主要な事業方針は以下の通りである。

I.より安全で環境に優しいクルマづくりへの取り組み
当会は、「安全」・「環境」への対応を自動車産業の最重要課題に掲げ対応に努めてきたが、わが国の自動車産業が今後とも持続的に成長し、日本の自動車メーカーが厳しい競争のなかで世界に伍していくためには、さらなる取り組みが不可欠であると考えている。本年はさらに明確な目標を設定し、その実現に向け具体的な取り組みを進める。

安全な道路交通環境の実現のためには「ひと・クルマ・道路環境」のそれぞれの立場から総合的・多面的な対策が必要である。
昨年1月に政府が「今後10年間で交通事故死者数を半減させ、世界一安全な国の実現」を目標に掲げたことから、その目標に向けて最大限貢献していく。当会では車両安全対策の更なる推進を図るとともに、より効果的な交通安全啓発活動を実施するほか、今後の交通安全基本計画や道路政策当局への施策提言実施に向けて取り組む。特に、交通事故死者数が全体として減少している中にあって、高齢者の割合が極めて高いことから、高齢者向けの交通安全教育プログラムの構築を目指すなど、今後の高齢社会での事故低減に向けた取り組みを行う。

地球温暖化防止対策に関しては、平成22年燃費基準の着実な達成に向けた取り組みとともに、低燃費・低公害車の開発・普及や燃料電池車の実用化促進、また自動車用燃料の改善に向けて石油業界と協力し研究を進める。特に一昨年、わが国において世界初となる燃料電池車が販売されたが、これは日本の自動車メーカーの持つ技術力の高さを示す一例であり、今後もわが国の「技術力」を活かし、世界の自動車産業をリードすべく、さらなる技術の向上と開発に取り組み、地球環境の改善に向けて努力していく。

大気環境改善対策については、昨年10月に施行されたディーゼル車排出ガス規制(NOx・PM法)対策に続き、平成17年から始まる新長期規制への対応について積極的に取り組む。

来年1月から本格施行される自動車リサイクル法については、わが国における循環型社会構築のための重要な法律と位置付けられており、当会は、関係団体・行政機関と連携しつつ、同法律を適正にかつ円滑に実行するための社会システム構築に向けた取り組みに努力していく。

II.自動車産業のグローバル化とその推進への対応
産業のグローバル化が進展し、自動車そのものが国際商品として認知されている自動車業界にとって、貿易・投資に関する共通のルール策定や自動車の技術基準・認証制度の国際調和に向けた取り組みは極めて重要である。

WTO新ラウンドに関しては、自動車会合への参加を通じてセクター別関税・非関税障壁の撤廃に向けての活動、並びにロシアのWTO加盟に伴う関税引き上げの動向を注視し、引き続き政府関係者への働きかけを行う。また、FTA関係ではメキシコとの締結に続き、韓国・タイ・マレーシア・フィリピンとの協議締結に向けた交渉が進捗するなか、当会では政府の取り組みを積極的に支持し、各国工業会および政府関係者との会合を通じた理解活動等を行う。

アジア関係では、中国における自動車市場が急速な拡大を続けるなかで、自動車関連政策・制度の改変が予定されており、公平・公正な市場競争環境の確立に向け、日中自動車産業発展官民対話をベースとする同国への働きかけを強化するなど、日中間の相互理解を促進する。アセアンにおいては、アセアン統一市場実現に向けて各国の連携強化に向けた活動の支援、自動車産業の国際競争力を高めるための人材育成事業に協力する。また、途上国の基準・認証制度の構築に向けた取り組みに協力する。
北米関係では、米企業・自動車市場の状況、大統領選挙を控えた政府・議会の動向を注視しながら適切な対応を行うこととする。
欧州関係では、ACEAとの交流を推進しEU委員会・欧州議会・各国政府等への働きかけ、また欧州燃費に関する合意に向けた取り組みを行うとともに、各種規制の動向を把握し対応策について検討する。

また、通関・船積・海上輸送に係わる各種手続き・ルールの簡素化を図るため関係者への働きかけを行う等、海外物流の効率化推進に向けて取り組む。

なお、本年11月に予定されている「第2回大型車グローバルミーティング」、並びに平成17年に予定されている「第3回乗用車グローバルミーティング」の開催に向けて諸準備を進め、同会合により自動車メーカーが抱える共通課題を認識し、各国自動車団体や外国政府との交流を一層充実させ、相互理解の促進を図っていく。

III.より快適で、楽しいクルマの利用環境への取り組み
お客様がクルマを身近なものとして利用頂けるよう利用環境の改善を図り、より快適で楽しいクルマ社会構築に向けて積極的に取り組む。

現在、自動車には複雑かつ多岐にわたる過重な税負担が存在しており、当会では引き続き、自動車税制の簡素化・軽減の実現に向けて要望活動を行うとともに、一般ユーザーや世論に対する理解活動の一環としてシンポジウムの開催や、各種ツール類を活用した広報・啓発活動を行うほか、環境税導入議論に対する基本的スタンスの確立、その他自動車に関連する各種税制の研究を行う。

また、ETCの普及やカーテレマティクスの推進、福祉車両の開発・普及、二輪車の利用環境改善や障害者免許の緩和要望、併せて車両盗難対策などについて取り組み、お客様により快適なカーライフを提供する。

本年11月に開催する「第38回東京モーターショー―働くくるまと福祉車両―(2004年)」では、お客様参加型・体験型のコンセプトを維持発展させ、くるまと社会の関わりを楽しみながら理解頂けるモーターショーを目指す。
また、「2005年日本国際博覧会−<愛・地球博>」における自工会パビリオンの建設並びに展示内容の検討など、来年3月の開催に向けた組織体制の整備も含めて具体的取り組みを進めていく。

当会では旧自動車工業振興会、旧自動車産業経営者連盟との統合3年目を迎え、今後のモーターショー事業のあり方やさらなる運営の効率化を検討するとともに、労務問題への対応について関係団体とも調整の上、所要の見直しを図るなど、統合で得られた総合力を充分に発揮し、状況変化を的確に捉え柔軟且つ迅速な対応を図る。

以 上