JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2002年05月16日

平成14年度事業計画

 平成14年度の日本経済は、減速傾向にあった米国経済の改善が見込まれるとともに、世界経済全体も緩やかな回復が予想される反面、国内においては雇用や金融システムに対する不安感などからデフレ基調を脱することは容易ではなく、加えて株価不振、企業収益の悪化、生産・消費の低迷等もあって、引き続き厳しい状況が続くと予想される。
 しかし、一方では構造改革がいよいよ本番を迎え、行財政、公共事業、社会保障など、あらゆる分野で抜本的な改革が進められることから、新規需要や事業機会・雇用の創出が促進され、年度後半には回復の兆しが現れるものと期待される。

 平成14年度の四輪車国内需要は、経済成長率の2年連続マイナスが予想されるなど、依然として厳しい経済環境が続くものの、代替母体が増加し、新商品投入効果等も期待されることから、ほぼ前年度並みの水準を確保できると見込んでいる。一方、二輪車については大型スクーター等の新商品投入効果や代替需要の顕在化等もあって前年度を上回るものと見込まれる。
 輸出は、四輪車がEU市場と北米市場の減少等が影響して昨年度を下回るが、二輪車は、アジア市場の順調な回復により増加するものと見込まれる。

 わが国自動車産業は、基幹産業として低迷を続ける日本経済再生のリーダー的役割を担うことが期待される一方、産業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。
 自動車産業が取り組むべき課題は多岐にわたっているが、基幹産業としての期待に応えながら与えられた課題を解決するためには、過去の既成概念にとらわれず、常に一歩先を見据えるとともに、グローバルな視点に立脚した活動を行うことが必要であり、こうした姿勢が社会との共生をはかりつつ産業の持続的な発展に結びつくものと確信している。

 当会は、本年1月に日本ゼネラルモーターズを会員として迎え、本年5月には「自動車工業振興会」ならびに「自動車産業経営者連盟」との統合を果たし、新生自工会としての第一歩を踏み出すこととなった。
 今後は、新体制の下で、より効率的で柔軟な組織運営を目指すとともに、新設委員会を含めた各委員会の活動を通じて新たな領域への課題へも積極的に取り組むこととする。

 平成14年度における主要な事業方針は以下の通りである。

1.環境問題への対応
 21世紀は、あらゆる産業が自然環境に配慮しながら経済活動を行うことが当然のこととして求められる時代である。当会としても、自動車産業が地球規模での環境改善実現のために担うべき役割の大きさを十分に自覚し、引き続きリサイクル対策や地球温暖化対策等の環境問題への対応を積極的に推進する。
 10月に施行予定のフロン回収・破壊法に関しては、処理ルートの確立ならびに公正かつ透明な費用収受を確保するためのシステム構築と運用体制整備に努めるとともに、行政機関・団体とも連携しつつ関係事業者への周知をはかる。
 また、現在、法律制定準備が進められている「自動車リサイクル法(仮称)」については、既存のリサイクルシステムに係る事業者が果たしている役割を前提に、わが国の状況に応じた制度を構築するとの方針のもとで、関係者の役割分担や費用負担のあり方等が検討されている。
 当会としてはリサイクルに配慮した自動車設計に努めることはもとより、円滑なリサイクル・処理に必要な各種制度の構築ならびに運用に積極的に参画するなど、自動車メーカーに課せられた役割を着実に遂行する。さらに、制度の実効性・公平性を確保しつつ、円滑化・効率化をはかる観点から、セーフティネット機能や資金管理・情報管理機能を有する指定法人の設置について、関係者とも連携の上、具体的な対策を検討していく。
 地球温暖化防止に向けては、2010年燃費基準の着実な達成と、基準達成車の早期市場投入ならびに低公害車の車種拡大および普及に努めることにより、CO2排出量のさらなる削減を目指すほか、燃料電池車の実用化に向けた環境整備を進めるなど、引き続き自動車メーカーとして最大限の努力を行う。
 また、新長期規制適合車の早期提供を目指し、現行ディーゼル車の排出ガス低減対策について引き続き積極的な取り組みを進めるとともに、関係団体とも連携しつつ燃料品質の改善に努めるなど大気環境改善に向けた総合的な対策を推進する。

2.産業のグローバル化への対応
 昨年、世界貿易機構(WTO)会議における新ラウンド交渉開始の合意、中国、台湾のWTO加盟、さらには日・シンガポール経済連携協定の締結など、国際ルールおよび制度の統一に向け大きな前進がはかられた。
 自動車業界としても、各国政府・自動車関連団体との交流や意見交換を通じ相互理解・協力関係を深めていきたい。さらに、WTO、APEC、AFTA、WP29を通じて自由貿易および制度統一の促進を各国政府・業界関係者へ働きかけるとともに、個々の課題においてグローバルな対応を推進していく。
 米国関係においては、米国政府・関係団体との交流を密にして相互理解を深めるとともに情報収集に努めつつ、的確な広報活動を展開し通商問題化の防止に努める。
 また、2005年以降のCAFE基準値の引き上げ議論においては、日本車に対し差別的な取り扱いとならないよう対策を講じる。
 欧州においては、自動車流通規則に関するEUドラフトが採択され、また、環境・安全政策においても業界との自主合意が成立するなど、自動車産業に対し規制強化をはかりながら如何に産業を発展させるか、いわゆる"Sustainability"が重要課題となっている。当会としては、EU委員会、欧州議会議員等との交流を促進するとともに、欧州自工会(ACEA)をはじめ欧州自動車業界との連携強化を通じて"Sustainability"議論における自動車業界の貢献を積極的にPRしていく。
 アジアにおいては、政府の協力を得ながら、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンへの専門家派遣を着実に実行し、各国における人材育成をはかるとともに、AFTAの推進および裾野産業育成、環境、基準調和、統計整備への支援を行うため各国自工会ならびにAAFと協力しつつ、アセアン各国への働きかけを強化する。
 なお、中国関係においては、「日中二輪車知的財産権プロジェクト」の立ち上げ等、知的財産権の取り組み強化をはかるとともに、基準・認証制度のモニターなどWTO加盟に伴う公正かつ自由な市場環境の整備に取り組むほか、日中自動車産業間の健全な競争と協調を見据えた関係のあり方などを検討していく。
 また、東京モーターショー開催時における各国自動車業界との交流を一層充実し、相互理解を深めるとともに、アジア地域における国際モーターショー開催を積極的に支援していく。

3.国内における諸課題への対応
 平成14年度は、わが国税制の抜本改革に向けた議論がされる中で、道路特定財源の暫定税率の期限到来、新道路整備計画の策定等、自動車税制の根幹部分が俎上にのぼることに加えて、京都議定書批准、環境税導入論議等、自動車税制を巡る議論が活発化することが考えられる。
 このため、自動車税制の将来におけるあり方や自動車税制の簡素化・軽減の観点を踏まえた自動車税制の見直しを訴求する絶好の機会でもあり、関係方面への要望を推進していく重要な年として活動を展開していく。
 車を利用する全ての人により安全で快適なクルマ社会を提供できるよう、車両安全対策の一層の強化に取り組むとともに、ITS(高度道路交通システム)やASV(先進安全自動車)等を活用した総合的な交通安全対策を推進し、交通事故のない社会の実現を目指すほか、福祉車両やノンステップバスの充実、車両盗難防止に向けた取り組みを進める。
 ビジネスインフラ整備の観点から、引き続き自動車業界共通の電子商取引ネットワークの整備推進に取り組むとともに、経営戦略的な観点から知的財産制度のあり方等について、政府の取り組みも踏まえつつ自動車業界としての対応を検討する。
 二輪車に関しては引き続き正しい理解促進と利用環境改善に努めるとともに、低迷を続ける大型貨物車等の市場活性化に資するため、あらゆる角度から検討を行い必要な対策を講じる。
 本年10月に開催される「第36回東京モーターショー」については、長年にわたり築き上げられてきた伝統と実績を継承しつつ、さらなる内容の充実と発展に努める。
 産業のグローバル化、IT化が進展するとともに、産業を取り巻く環境が大きく変革する中にあって、労務問題に対する総合的かつ迅速な対応が求められていることから、国内における健全な労使関係の維持・発展に資するための施策の推進をはかるとともに、国際的な労働諸課題に関する情報の収集や研究活動の強化に努める。
 当会の主張ならびに事業活動の成果を通じて自動車業界への理解を深めてもらうべく、引き続き広報活動の充実・強化に取り組むほか、自動車関連分野における学術研究・調査に貢献できるよう、自動車図書館の内容充実に努める。

以上