JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2003年05月15日

平成15年度事業計画

平成15年度の日本経済は、引き続き厳しい雇用情勢が見込まれるとともに、株価低迷による企業収益の悪化、消費支出や設備投資の伸び悩みなど、当面は不透明な状況が続くものと思われることから、雇用・株価対策や金融緩和策等を早急かつ着実に実施するなど、日本経済回復に向けた政府の適切な経済運営に期待したい。また、中東の政情およびSARSの蔓延などの不安要因が世界経済の動向に影響を及ぼすことが懸念されることから、速やかに不安要因を取り除き世界経済の安定と発展に向けた対策を各国が協力して取り組まれることを期待したい。

平成15年度の国内四輪車市場は、各社の新型車投入やモデルチェンジ等の市場活性化策による効果が期待できることから、僅かながら前年度を上回ると見込んでおり、二輪車についても、市場の多様化に応えたモデルの投入などにより前年度を上回るものと見込まれる。

自動車産業のグローバル化の進展に伴い、各地域における現地生産化の比率が年々高まる中にあって、輸出については欧米の景気先行き不透明感が強まっているといった不安材料があるものの、中国、東南アジア諸国等好調持続の市場もあり、前年度を若干上回るものと見込まれる。

わが国自動車産業は、広範な関連産業を持つ総合産業であるとともに、日本を代表する基幹産業の一つであり、その自動車産業が活力を失うことなく率先して日本経済回復のリード役を果たすためには、自らができること一つひとつに積極的に取り組むという姿勢が重要である。そのためには、自動車産業自身が「モノづくり」の原点に立ち返り、何がお客様にとって便益をもたらすのか、お客様の視点に立ち、自動車メーカー自らが高いハードルを課し、目標達成に向けて互いに切磋琢磨していかねばならない。

当会は、昨年5月に旧自動車工業振興会、旧自動車産業経営者連盟との統合を果たしたことにより、これまで以上に幅広い領域で事業活動を展開するに至っている。

統合2年目を迎えた平成15年度においては、統合によって得られた総合力を最大限に発揮して、安定した労使関係を基盤に、労務・安全衛生をはじめ、幅広い経営諸課題に取り組み、わが国自動車産業の持続的な発展を目指すとともに、本年4月に新たに会員となった「三菱ふそうトラック・バス」を含めた会員各社の協力の下、迅速な意志決定と透明で効率的な運営に努め、直面する課題に積極的に取り組むこととする。

I. 環境・安全など技術の進歩を通じた社会への貢献

当会は、かねてより環境・安全問題への対応を最重要テーマに掲げて対策に努めてきたところである。

昨年、わが国において世界初となる燃料電池車が販売されたが、これは日本の自動車メーカーの持つ技術力の高さを示す一例であり、今後もわが国自動車産業が持つ「技術力」を活かし、環境・安全分野において世界の自動車産業をリードすべく、さらなる技術の向上や新技術の開発に取り組み、地球環境及び地域環境の改善、リサイクル対策、安全対策等を積極的に推進する。

燃料電池車をはじめとする低燃費・低公害車については、政府として普及拡大を推進するとの方針を打ち出しており、当会としても一層の技術開発や車種拡大に向けた取り組みを進める。また、2010年燃費基準の着実な達成ならびに基準達成車の早期市場投入など、引き続き地球温暖化防止のための努力を行う。

ディーゼル車の排出ガス対策として、新たな排出ガス規制に対応した新技術の開発に努め、規制に適合した新車投入を積極的に推進するなど、引き続き自動車業界として最大限の努力を払うが、同時に、燃料品質の改善や交通流の円滑化に向けた政策提言を行うなど、関係団体等とも連携しつつ総合的な大気環境改善対策を推進する。

平成17年1月までに開始が予定されている自動車リサイクル法の政省令が具体的に検討されることから、個別項目ごとに具体的な対応策を調査・検討するとともに、制度全体が円滑に運用できるよう関係省庁・関係団体とも協力しつつ、システム構築に向けた取り組みを加速化させる。



政府は、昨年1年間における交通事故死者数がピーク時(昭和45年)の半減を達成したことを受けて、さらに今後10年間を目途に交通事故死者数を半減させるとの目標を掲げているが、目標達成のためには車両の安全性確保、高齢者の交通安全対策、安全かつ円滑な道路環境整備、交通教育等を重点的に進める必要があるとしている。

当会としては、従来から取り組みを進めているITS(高度道路情報システム)や、ASV(先進安全自動車)の活用ならびに歩行者保護への対応等、車両の安全性確保に向けた取り組みをより充実させることはもとより、交通安全思想の普及・拡大や交通安全に関する政策提言を実施するなど、総合的な交通安全対策の推進を通じて政府の目標達成に貢献して行く。

なお、平成15年度においては、こうした環境・安全にかかわる問題の解決に向けた具体的な方策・提案を取りまとめ、広く社会へ発信できるよう検討を進める。

II. 自動車産業のグローバル化への対応

自動車産業のグローバル化ならびに、自動車の国際商品化が進展・定着し、国境にとらわれない生産・供給活動を行っている自動車メーカーにとって、共通基盤の確立や認定ルールの整備は極めて重要である。

このため自動車業界としても、今後本格化するWTO新ラウンドやFTA(自由貿易協定)における貿易・投資に関する共通ルール策定のための議論に関与し、その進捗に応じて適切な対応に努めるとともに、自動車の技術基準・認証制度の国際調和活動へも積極的に参画していく。

中国においては、新体制の下、WTO加盟に伴う自動車関連政策・制度の改変が実施されており、公平・公正な市場環境政策の確立が求められている中にあって、当会としても、本年半ばを目途に中国事務所を開設し、中国政府ならびに中国自動車業界との交流強化をはかり、日中間の建設的な関係構築に努める。

その他のアジア地域においては、アセアンの自動車産業競争力強化のため、AFTA(アセアン自由貿易協定)推進を積極的に支援するとともに、タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピンへの専門家派遣事業等を通じた人材育成事業に協力するほか、アセアン自工会や韓国自工会との交流を引き続き推進する。

米国においては、米国政府・関係団体との交流を通じて相互理解の促進に努める。

欧州においては、ドーハ新ラウンド、環境問題等、幅広いテーマについてEU委員会や欧州議会等への働きかけを推進するとともに、欧州燃費合意中間見直しへの対応を進める。

自動車産業のグローバル化に対応したビジネスインフラ整備の観点から、業界共通ネットワーク(JNX)の国際接続について、米国(ANX)との接続に続き、欧州、オーストラリア、韓国との相互接続(GNX)の実現を目指した取り組みを推進する。

なお、今秋の東京モーターショー開催時に、日米欧各国自動車メーカー首脳によるグローバルミーティングを開催し、自動車業界の抱える共通課題に対する認識を共有するとともに、各国自動車団体ならびに政府関係者との交流を一層充実させ、相互理解の促進に努める。

III. 豊かなクルマ社会の実現

豊かなクルマ社会の実現を目指して、お客様が、車をより快適に、身近なものとして利用していただけるよう、利用環境の改善に向けた取り組みを進める。 現在、自動車ユーザーは、複雑かつ過重な税負担を強いられており、自動車業界では、従来から一貫して過重な税負担の引き下げを主張し、簡素・公平・中立で、環境や国際調和に配慮した自動車税制とするべく自動車関係諸税の抜本的な見直しを要望してきたところである。本年度においても、自動車ユーザーの視点に立ち、望ましい自動車税制の実現を目指した取り組みや、道路特定財源の使途拡大に対しては、道路整備以外に使うのであれば軽減すべきとの主張を行うとともに、道路など交通環境整備に向けた調査・提言活動や、ETC(自動料金支払いシステム)の普及などクルマの走行環境改善への取り組みを進める。



現在、自動車保有に必要な諸手続のワンストップサービス導入に関する検討が進められているが、当会としては、お客様の利便性向上に寄与するとの視点に立ち、政府ならびに関係団体とも連携・協力しながら取り組みを進める。

本年10月には、「第37回東京モーターショー―乗用車・二輪車―(2003年)」を開催し、「いま、挑む心。Challenge & Change‐希望、そして確信へ‐」をテーマに、より多くの方々にクルマへの夢や魅力を感じていただけるショーとなるよう、これまでの歴史と伝統を維持しながら、お客様参加型のショーへの転換をはかるとともに、情報発信機能の強化や国際交流機会の充実など、国際的にNo.1の評価を得られるようなモーターショーの実現に向けて取り組む。

2005年3月に開幕する「2005年日本国際博覧会‐<愛・地球博>」へ「人・クルマ・地球 未来へ。」をテーマにしたパビリオンを出展することとしているが、本年度より出展内容の具体的検討に着手する。

当会の事業活動の成果を積極的に情報発信することにより社会への貢献を果たすとともに、自動車業界への理解をさらに深めていただけるよう、引き続き広報活動の充実・強化に取り組む。

平成15年度事業計画のポイント

以 上