JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長会見  2018年12月20日

日本自動車工業会
豊田会長

●豊田会長挨拶

  • 豊田でございます。会長に就任させていただき半年が過ぎました。就任した時のことを振り返りますと、最初の会見で皆さまからいただいたご質問を思い出します。最初の質問だったと思いますが、「最大の課題はなにか?」というご質問をいただきました。私の回答は「自動車産業が、あてにされる産業、そして日本の成長を引っ張っていく存在である事に拘っていくこと」とお答えさせていただきました。今思えば、とっさに出た「あてにされる産業」という言葉に、私の想いが詰まっていたような気がいたします。
  • 自動車産業は決して成熟した産業ではなく、ましてやクルマは単に納税を生む存在でもございません。CASEと称される電動化・自動化などの技術を進めていけば、クルマはその存在自体が社会システムの一部となり、人々の暮らしを更に豊かにしていくものになっていけると考えております。それは今まさに自動車産業そのものが、今までとは違う新しい産業へモデルチェンジしていこうとしているということなのだと思います。しかしその未来は、今のままの延長線上にあるわけではなく、自らの力で生まれ変わる努力をしなければ実現できません。今ちょうど、我々は、苦しみながら、その過渡期を歩き出したところにおります。
  • 前回会長を務めた頃、「六重苦」という言葉でその苦しみが表現されました。思えば、それは次々と押し寄せる逆境に、いかに耐えうるかという「受けの苦しみ」でした。今と大きく違うのは、そこで見ていた未来が従来の延長線上にある未来でしかなかったということだと思います。確かに今も我々は苦しんでいます。しかしその苦しみは、モデルチェンジのための苦しみであり、自ら変わっていかなければその先はないという想いで、ある意味「生みの苦しみ」に直面しているものと考えております。
  • 自工会が発足しましたのは1967年。自動車が急速に普及し、国や人々から、まさに「あてにされる産業」として求められてまいりました。しかしその一方では、排ガス規制や貿易摩擦など、個社では乗り越えがたい苦しみに直面しておりました。その時、オールジャパンで結束しようと求められたのが、この自工会です。そして今も、個社ではなく皆で、それも「あらゆる意味」で一枚岩となったオールジャパン体制で臨んでいかないといけません。
  • 「あらゆる意味」と申しましたのは、ひとつ目は、自動車各社が競争しながらも協調していく「オール自工会」として。二つ目は、四輪だけでも二輪だけでもなく、販売、整備、部品、中古も含め、自動車に関わる全てのメンバーで臨んでいくという「オール自動車産業」として。更には情報関連、エレクトロニクス、エネルギーなど、我々自動車と繋がり、仲間になってCASEを進めていく様々な産業をも含めて一枚岩になっていく。そしてそれにより、国からもクルマが改めてあてにされるようになっていく。言い換えれば「国の戦略産業」として認めてもらい、本当の意味でのオールジャパンになっていくことが必要だと思います。そうなっていけるよう今の自工会も努力してまいりますので、皆さまにもご支援いただければ嬉しく思います。よろしくお願いいたします。
  • また、私ども自動車産業は、世界の様々な国でビジネスを展開してきております。その国の経済やその地の人々に求められる存在でありたいと願い、その地が「ホームカントリー」「ホームタウン」であるとの想いでやってまいりました。それに加えてこれからの自動車産業には、「ホームプラネット」という概念も必要になってきたと考えております。CASEが進んでいけば、その繋がりの中では、国境と言う概念は薄れてまいります。また、空を見上げれば、空に国くにの境さかいはなく、地球規模となっている環境問題など、我々の故郷である「ホームプラネット」への想いを持って考えていかなければなりません。「ホームプラネット」という視点で見た時に、日本の自動車産業がどのような役割を果たしていけるのか、少し先の未来をも見据えて、そのような考え方を我々としてもスタートしていければと思っております。
  • もうひとつ、自動車があてにされるために、私が真っ先に考えること、それはやはり、もっとクルマに乗ってもらいたいということです。そのためには、お客様に乗りたいと思っていただけるような魅力的なクルマをつくることが一番ですが、これは個社の努力ですので、各社が競い合いながら、より魅力的なクルマをつくってまいります。
  • 一方、もっとクルマに乗りやすい環境にする。これは会社の垣根を越え協調していくものだと思います。抜本的税制改革の必要性はこのために訴えてまいりました。関係省庁の皆様、地方自治体の皆様には、我々からの想いに耳を傾け議論を尽くし、その結果、自動車税減税という歴史上初めての恒久減税をご決断いただきました。自動車ユーザーのためにという想いを業界内だけでなく、行政の皆様含め、関係者皆で共有できた結果であると改めて感謝申し上げます。
  • また、「クルマやバイクに乗ることはこんなに楽しい」「これからのクルマって、こんなにワクワクするものなんだ」ということを、多くの人にもっと知っていただければ、「もっとクルマに乗りたい」と言っていただけるとも思っております。それに拘ったイベント、10月の東京モーターフェスには、多くのお客様にご来場いただけました。本当にありがとうございました。来年は東京モーターショーが。その翌年には東京オリンピック・パラリンピックがございます。ワクワクするような未来のモビリティ社会の絵姿を皆様にお届けしたいと考えております。
  • モータースポーツもクルマやバイクの魅力を伝えるための大きな力を持っております。例えば、ルマン24時間レース。本年、二輪はホンダ、四輪はトヨタが勝利を手にいたしました。日本代表のクルマやバイクが頑張る姿も私どもへの期待に繋がるものと信じております。そして、もし私自身が笑顔でハンドルを握る姿も「クルマって楽しい」と思っていただけることに繋がるのであれば、それも引き続き頑張ってまいります。
  • クルマに乗りやすい環境が整っていき、多くの方に「クルマにもっと乗りたい」と思っていただける。そして沢山のお客様がクルマに乗って、多くのクルマがお客様の愛車になっていく。来年2019年、そんな年にしていければと考えております。そして更にその先の未来、クルマが社会システムの一部として様々な人々の暮らしをより豊かにしていく。そんなモビリティ社会に向け、大きく歩みを進めていくのも2019年だと思います。もっともっと自動車産業をあてにしていただけるよう、自動車工業会は取り組んでまいりますので、今後もご支援ご協力、よろしくお願いいたします。 ありがとうございました。


【2018年 自動車業界 活動報告(映像)】