JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長会見  2018年05月17日

日本自動車工業会
豊田会長

●豊田新会長挨拶

  • ご紹介いただきました豊田でございます。会長就任にあたりまして、簡単ではありますが、ひと言ことご挨拶を申し上げます。6年ほど前、当時会長だった志賀さんから「たすき」をうけまして、自動車工業会会長を務めさせていただきました。その後、池さん、西川さんと、業界の発展に向けて、共に悩み、共に苦労を重ねて参りました。そして、本日の理事会におきまして、日本自動車工業会の18代目の会長の「たすき」を受け取りました。先輩の皆さま方に、感謝いたしますとともに、100年に1度と言われる大変革の時代。身の引き締まる思いを感じております。
    さて、改めて申し上げますと、日本の自動車産業には、2つの特徴があると考えております。1つ目は、「日本には、品質に厳しいお客様がたくさんいらっしゃる」ということであります。言うまでもなく、自動車は、BtoCの産業であり、日本メーカーの品質・技術力は、日本のお客様から教えていただいたものに他なりません。日本のお客様がクルマ・バイクから離れるということは、日本企業である我々の競争力を失うこと、そのものなのだと思います。お客様にとって一番良いやり方は何かを常に考えながら、進んでいくことが必要だと考えております。2つ目は、「自動車は、裾野の広い産業で、たくさんの現場がある」ということです。2輪や商用車も含め、自動車産業には、素材や、部品、物流など、多くの産業が集積しております。改めて数値で述べさせていただきますと、国内の雇用は540万人、全産業の約1割、輸出金額は16兆円、製造業の約2割、研究開発費、設備投資額は、合計で6兆円となります。歴史を振り返りますと、1967年、今から50年ほど前。日産自動車の川又社長が、初代会長を務められました。「自動車産業はお客様や現場に近い」からこそ、自動車工業会の会長は、現役の社長が就任することが多かったのだと思います。私自身、トヨタ自動車の社長を務めながら、日本のために少しでもお役に立ちたい。そういう想いで、今回、会長職を全うしたいと考えております。
    さて、世の中の声に耳を傾けますと、「自動車産業は、今後は安泰とは言えないだろう」そういう声が、聞こえて参ります。自動車メーカーのみならず、いくつかの産業で、品質管理をめぐる不正が発覚し、世界有数の技術力を誇る“ものづくり大国日本”の根底が崩れかけているのかもしれません。ものづくり不信というだけではありません。いたるところで世の中の不信が叫ばれております。また、自動車産業を取り巻く環境は、「電動化」「自動化」「コネクティッド」、第4次産業革命と呼ばれるIoTやAIなどの技術進展により、異業種も巻き込んだ、100年に1度と言われる変革期を迎えております。さらに、日本では、近い将来、環境や渋滞、事故などの問題が、都市化に伴い、一層深刻化する恐れがございます。世界経済のけん引役の不在、保護主義の進展など、為替や輸出に関する不透明さも増しております。モビリティ社会が、大きく変わっていく中で、自動車産業は存在感を示せるか。次の100年も、クルマ・バイクはモビリティの主役でいれるのか。ライバルも競争のルールも変わってきており、まさに「未知の世界」での「生きるか死ぬかの闘い」が始まっているのだと思います。こうした変化の激しい時代だからこそ、常に原点に立ち戻り、「お客様視点」と「現場に寄り添う視点」を持って、自工会加盟の全14社、オールジャパンでこの難局を乗り越えて参りたいと思います。私自身も、私らしく、現場に一番近い、自工会会長でありたいと思います。
    さて、日本自動車工業会は、言うまでもなく、日本で生まれ、日本で育てていただいた産業です。日本のお客様に、これからもクルマ・バイクを愛し続けていただくことが、国内の生産台数を支えることに繋がります。一定の国内生産台数があるからこそ、我々は、日本で様々な先進的な「ものづくり」の挑戦を続けることができるのです。国内のマーケットの活性化に向けて、日本の特徴を念頭に、拘っていきたいことが2つございます。
    1つ目は、お客様にとって、クルマ・バイクを購入しやすく、保有しやすい環境をつくることです。そのためには、我々メーカーが率先して、魅力ある商品の提供に取り組むことはもちろんですが、ご承知の通り、税金・保険代、駐車場代・ガソリン代。クルマ・バイクを保有する上では、多くの費用が掛かって参ります。シェアリングやカーリース、レンタカーなど、保有の形態・乗り方の選択肢も増えてきております。お客様にとっては、何が最適なのか。これまでの常識にとらわれず、1つ1つチャレンジを重ねていくことが、お客様とクルマ・バイクとの接点を増やすことに繋がって参ります。その結果として、代替のタイミングを早めることにも繋がります。日本には、4輪だけでも、8,000万台近い保有がございます。この特徴を活かせれば、マーケットの活性化は、まだまだ可能だと考えております。本年は、自動車税制改正の論議についても、大きな山場を迎えますが、複雑・過重な自動車関係諸税に終止符を打ち、制度の簡素化、お客様の負担軽減に向けて、取り組んで参りたいと思います。
    もう1つは、現場力の再徹底を通じて、モノづくりの信頼回復に努めることです。生産現場での「摺り合わせ」や「カイゼン」「匠の技」。現場が「問題や課題を発見」し、「部門を越えた連携・協力」を惜しまず、ものづくりのプロセスの中でイノベーションを起こしていく。現場での実践を通じた知恵の積み重ねこそ、まさに日本の強みです。自動運転やAIなど、新しい分野の技術を実用化に落とし込むこれからのステージおいては、この日本の「現場力」という強みが、最も活きてくると考えております。新しい分野での取り組みでもあるがゆえに、課題も出てくることかと思いますが、何かあれば、決して焦らず、一度、立ち止まる。そして、現地現物で、しっかりと真因を追求していくことが、日本ブランドの信頼回復に繋がっていくと考えております。また、今後は、海外からの労働者も増え、職場の多様化も進むと思います。だからこそ、「現場力」「現場での人づくり」という日本の強みを先輩方から継承し、大事に育みながら次の世代に伝えていくことが重要だと感じております。日本自動車工業会のメンバー1社1社が、それぞれの会社の「らしさ」、ブランドの「らしさ」とは何かを突きつめ、磨きをかけていければ、「日本らしさ」という魅力の向上、ひいては日本全体の競争力の底上げになると信じております。
    最後になりますが、2年後の2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。そして、その前年となる2019年の東京モーターショーは、自動車業界としての変革の真価を問う重要なマイルストーンであると考えております。具体的な検討は、これからではありますが、来年の東京モーターショーでは、未来のモビリティ社会の一端をお見せすることで「真に世界一のテクノロジーショー」となり、そして、2020年、更にはその先に続く「先進モビリティ社会、日本」への期待感を膨らませていく場にしていきたいと考えております。繰り返しにはなりますが、日本自動車工業会は、日本を故郷にする企業の集まりです。日本のお客様のため。一緒に働く従業員、その家族のため。もう一度、日本のものづくりを背負っているという責任の重さを胸にして、日本経済の持続的発展に貢献できるよう、自動車工業会が一丸となって、全力を尽くして参りたいと思います。今後ともご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

●豊田新会長体制への副会長としての抱負

  • (八郷副会長)
    100年に一度の大転換期と言われる中、豊田会長の下、オールジャパンの一員。そしてクルマファン・バイクファンの一人として、まずは2年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、副会長として、豊田会長の思いに全面協力し、自動車産業を盛り上げ、日本の成長に貢献していきたいと思っておりますので、皆様、今後もご声援、宜しくお願い致します。
  • (西川副会長)
    これから2年、副会長として豊田会長を支えていくということで、非常に大事な時期を迎えます。これまで我々は脈略を持って仕事をしてきました。そして日本の自動車産業を盛り上げようということで、2019年、2020年と非常に大事な年になります。19年のモーターショー、そして、20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、お客様から見てもわかりやすい盛り上げ方ができればと思っておりますし、お客様から見て、よりお買い求めいただきやすい車、使っていただきやすい税制。このような部分も非常に大きなマイルストーンになりますので、チームワークで豊田会長を支えていきたいと思います。
  • (小飼副会長)
    これからの日本の自動車産業がイノベーションをリードできるように。豊田会長を最大にサポートして、取り組みたいと思います。
  • (永塚副会長)
    課題は山積をしております。このような中、自動車産業が一丸となって取り組むべき分野、あるいは協調して取り組むべき分野はどんどん増えていき、また複雑になっていくと思います。自工会事業の円滑かつ効果的な実施に向け、最大限努力してまいりまたいと思います。特に豊田新会長のスピード感にしっかりとついて行けるように、リーダーシップの下、最大限の努力をしていきたいと思っております。

以上