JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長会見  2010年09月16日

志賀会長

自動車産業が直面している課題について

  1. 為替の安定化、円高の是正
    ;昨今の主要各国通貨に対する円の為替水準は、想定を超えた円高状況であり、日本で生産する車のコスト競争力は確実に失われている。この円高状況は、国内生産や雇用に大きな影響を与えかねず大変危惧している。
    ;我々、また部品メーカーは世界中に工場を有しており、為替によるリスクを避けるため海外生産への比重を高めていかざるを得ない状況にある。
    ;一昨日より実施された為替介入については、内外に日本政府の円高に対する強い姿勢を示すものであり評価できる。
    ;しかし、会員各社の想定為替レートと現在の為替水準では依然として乖離があることから、政府・日銀におかれては、引き続き、実効性のある対策を講じていただきたい。
  2. エコカー補助金制度終了後の反動減への対応
    ;エコカー補助金制度終了に伴い、今後予想される需要減退への対応として、来年度末まで実施されるエコカー減税を十分に活用し、また新型車の投入等の積極的な販売活動により、その影響を最小限に止めたいと思っている。
  3. 法人実効税率の引き下げ
    ;法人実効税率の引下げは、企業の競争力強化や活動の活性化を図るとともに、活動拠点の海外流出を抑制することにより、国内の空洞化を防ぎ雇用の確保に資するものである。
    ;日本の法人実効税率は約40%であることから、政府におかれては国際水準である25〜30%を目途に早急に引き下げていただきたい。まずは、来年度に少なくとも5%の引き下げをお願いしたい。
  4. 自由貿易体制の推進
    ;自由貿易体制の推進は、グローバル企業である自動車産業にとって事業推進に大きく関係する重要な課題であり、政府におかれては他国に劣後することのないよう関係諸国との積極的な交渉を進めていただきたい。
    ;我々としても政府の取り組みに協力していきたい。
  5. CO削減の目標値設定
    ;政府が示した「CO排出量を90年比で25%削減する」との目標は、これまで検討された様々なデータに照らしても極めて厳しいものと受け止めている。目標達成には、今後、長きにわたり国民生活や、経済・雇用に大きな影響を及ぼすものである。
    ;我々は、地球温暖化問題を最重要課題として捉え、今後とも燃費の改善や、次世代自動車の開発、自動車生産時の省エネに最大限の努力をしていく。
    ;政府におかれては、目標達成に向けた具体的な政策を立案する際には、想定される経済や雇用に及ぼす影響、国民負担の増加などを提示した上で国民各層、各界の意見を反映していただきたい。
  6. 生産変動への柔軟な対応
    ;企業にとって生産変動に柔軟に対応するためには、有期契約労働者の活用を不可欠である。
    また、多様化する労働者の就労ニーズに対応する面においても有期労働契約は必要と考える。

政府による経済対策について

  • 政府の新成長戦略については、急速な円高への対応として必要な時には為替介入を含め、断固たる措置をとる。また、日本に立地する企業の競争力強化のために、法人実効税率の引き下げに向けた検討や、エコカーなどの環境関連技術分野の支援事業推進などの施策が盛り込まれており、我々が直面している課題と軌を一にしている。
  • また、新成長戦略実現会議においても法人実効税率の引き下げをはじめとする企業の税負担軽減措置や、EPA促進の検討が盛り込まれており、政府におかれてはこれらの施策を確実に実施されるようお願いしたい。

平成23年度税制改正要望について

  • 自工会では平成23年度税制改正要望として、自動車・環境税制で7項目、企業・土地税制で14項目を要望している。
  • 自動車・環境税制では、道路特定財源の一般財源化により課税根拠を喪失した自動車取得税・自動車重量税と、従来の暫定税率に代わる税率として講じられた『当分の間の税率』の確実な廃止をはじめ、エコカー減税の確実な継続や、環境自動車税(総務省案)創設への反対等、自動車関係諸税の簡素化と負担の軽減の実現に資する項目を中心に、積極的な要望活動を進めていく。
  • 企業・土地税制では、企業の経営環境改善と国際競争力強化に資する観点から「法人実効税率の引下げ」をはじめ「研究開発促進税制の恒久化」「欠損金繰戻還付の復活・拡充、繰越期間の拡充」「移転価格税制の見直し」等を取り上げており、日本経団連等とも連携しつつ要望実現に向けて取り組んでいく。
  • 今後、税制改正議論を進めるに際しては、税制改正が、日本経済の成長に結び付くような視点で議論していただきたい。

以上