JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長会見  2010年07月07日

志賀会長

「新成長戦略」について

  • 6月18日に公表された「新成長戦略」の中に盛り込まれた、自動車産業に関連する下記1〜4の各項ついてはしっかりと政策立案・実行に結びつけて頂くようお願いしたい。
    1. 次世代自動車の開発・普及
    2. ;私どもは将来の省エネルギー、CO2排出量削減の観点から有力な技術として、次世代自動車に大きな期待を持っており、その開発に全力で取り組んでいる。
      ;一方、次世代自動車の普及には実際にお客様に購入していただくことが必要で、政府におかれてはその購入に対するインセンティブ、並びに充電インフラの整備を含めた普及促進策の確実な実施をお願いしたい。
    3. アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築するロードマップ策定、経済連携協定の推進、知的財産権の保護体制強化
    4. ;グローバル企業である自動車産業にとって自由貿易体制の構築は、私どもの事業推進に大きく関係する重要な課題であり、政府による関係諸国との積極的な交渉を期待すると共に、我々も政府をサポートして参りたい。
    5. 法人実効税率を主要国並みに段階的に引き下げ
    6. ;現在、我が国の法人実効税率は40.69%とEUやアジア諸国と比べて極めて高いものとなっており、日本国内で生産活動を行う企業の競争力強化のために、法人実効税率の引き下げ(25〜30%)をお願いしたい。
    7. 交通の高度情報化、交通管制の高度化、プローブ情報の集約・活用の効果検証
    8. ;自工会はこれまでもITS(高度道路交通システム)技術を活用した、交通事故の防止や渋滞解消に向けた取り組み進めており、政府におかれてもこの分野での積極的な推進をお願いしたい。
  • 上記以外にも、貿易関連手続き円滑化のための認定事業者(AEO)制度の構築支援や相互承認の推進、電気自動車の戦略的な国際標準化の推進など、自動車業界に係わる項目も盛り込まれており、これらについても政策立案・実行に結びつけて頂きたい。
  • なお、地球温暖化対策税の導入、国内排出量取引制度の創設など、一部の記述に自動車業界のスタンスと異なる内容も散見されるため、これらについては今後の議論の動向を注視していきたい。

自動車関係諸税について

  • 現在、参議院選挙期間中でありますが、民主党、自民党のマニフェストには自動車関係諸税の簡素化と負担の軽減が盛り込まれており、必ず実行して頂くようお願いしたい。
  • なお、自動車取得税と自動車重量税は一般財源化により課税根拠が失われており、昨年の税制改正で従来の暫定税率に代わる税率として講じられた「当分の間の税率」とあわせて、直ちに廃止すべきと考える。
  • 消費税引き上げの議論については、財政の健全化を図る上で重要なテーマであり、国民の理解を得た上で、消費税を含めた抜本的な税制改革議論を進めて欲しい。また、自動車取得税との二重課税の問題については、消費税の引き上げがそのまま車両価格のアップにつながることがないよう、しっかりと議論して頂きたい。

日本市場について

  • エコカーに対する減税措置と補助金制度が販売を押し上げているが、この補助金が終了する10月以降の反動減が懸念される。
  • また、足元の為替相場が1ドル87円台で推移していることから大変危惧している。このような状況では輸出の悪化が避けられず、更に中長期的には海外での生産も考えざるを得なくなる。
  • 一番懸念していることは、補助金終了による反動減と、円高による輸出減がダブルで国内生産に影響を与えることだ。日本経済が緩やかな回復基調にある中で、自動車の生産台数が減少することで景気に悪影響を与えるということは避けなくてはならない。政府におかれては景気の動向を注視し、必要な対策を打って頂きたい。

米国市場について

  • 北米の6月実績は我々が想定していた程の伸びがなかった。景気全般として雇用統計の悪化、株価低迷やドル安といった状況から、景気回復のスピードに懸念があるとの議論があるが、自動車の販売実績にはメーカーの商品戦略・プロモーション等が反映されることから、現時点での見極めは難しく、もう暫く動向を注視する必要がある。

欧州市場について

  • 需要喚起策が終了した国から順に反動減が出ており、市場全体がマイナス基調になっている。またギリシャ財政危機により、各国は緊縮財政施策をとっているため、新たな支援策実施は難しい状況にある。
  • 但し、ギリシャ問題については欧州各国が協調しながら迅速に対処していることから、EU域内に大きな危機が訪れるとか、それが世界に波及することはないと認識している。今後、様々な対策が実施されソフトランディングしていくものと考える。

中国市場について

  • 前年が非常に好調だったため、増加率は鈍化しているが、全体量では拡大傾向が続いている。従って市場の転換期が来ているようには見えない。

中国のストライキについて

  • 経済が発展していく中で労働の配分に関する議論は、かつて日本でも起こったことでもある。労使が常にコミュニケーションをとり、協調を図りながら競争力を維持していくことが重要と思う。

JAMAレセプションについて

  • 6月29日ベルギー・ブラッセルにて行われた「JAMAレセプション」では、EU政府関係者、自動車業界関係者、プレスなど約150名の方々をお招きし、成功裏に終了することができた。
  • また、同レセプションに先立ち、キャナラン議員をはじめとする欧州議会議員、オサリバンEU委員会貿易総局長など、欧州における政策決定のキーパーソンとなる方々と直接お会いし、自工会からは主に下記の1〜4のテーマを取り上げ、意見交換等を行った。
    1. 自工会会員会社による欧州経済への貢献
    2. ;日本の自動車メーカーは現地生産を進めており、ヨーロッパ全域で13の製造工場と、12の研究開発とデザインセンターを持っており、2009年は113万6千万台を生産、また13万6千人の雇用を創出している等の欧州経済への貢献内容について説明、改めて日本の自動車メーカーの貢献について理解を求めた。
    3. 日本−EU EIA(経済統合協定)の創設
    4. ;日本とEU両国はこれまでも重要なパートナーであり、今後とも引き続き双方の経済発展、並びに競争力強化を実現するために、日本−EU EIA(経済統合協定)の交渉を早期に開始することが重要である。また自動車業界としても政府の取り組みに積極的に支援するとの考え方を提示した。
    5. 国際的な車両型式認証の相互承認制度(IWVTA)の創設
    6. ;本年3月に日本政府が国際的な車両型式認証の相互承認制度(IWVTA)創設について提案したが、これは消費者にとって安全で環境に優しく、適切な価格の自動車が普及するメリット等、同制度創設の必要性について理解を求めた。
    7. 道路交通分野におけるCO2削減
    8. ;道路交通部門のCO2排出量削減のためには、自動車メーカーだけでなく、燃料の多様化、交通流の改善、効率の良い自動車の使い方、これら関係者全員がそれぞれの役割の中で統合的に取り組むことの重要性について共通認識が得られた。

以上