JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長会見  2005年04月21日

(小枝会長)

中国の反日運動について

  • 自工会で特に調査はしていないが、今のところは自動車のビジネスにはあまり影響がないと思っている。新車の発表や上海モーターショーについても、順調に行われていると聞いている。
  • 短期の出張者をどうするかについては、各社判断で規制をしているところもあるだろうが、一致しているのは不急の出張は延期するということ。以前のテロのような対策はしていない。世界的に見るともっと危ない地域もたくさんあり、中国だけを特別にはしていない。
  • テレビではクルマをひっくり返している映像もあるが、統計的に数えれば何百万台と走っているクルマのごく一部であるから、影響はそんなにない。
  • 我々は中国の大事なお客様のために開発拠点を作ったり工場を建てたりしており、中国のお客様のニーズに合ったクルマを、従業員の大部分を占める中国の人と一緒に協力して作っていく、というのが我々のスタンス。
  • 中国では自動車産業は全部現地資本との合弁であり、経営者も含めてメインは中国人である。中国の自動車産業の発展に寄与して、日本の自動車産業も発展するという相互補完の関係が大切。
  • 中国の投資計画、これからの新車開発、開発拠点等は計画どおり進めていく予定でいる。
  • 政府への働きかけということでは、産業全体として中国と日本はお互いの貿易量が多く補完関係が強まっているので、政治的な部分はなるべく早く解決していただきたいと思う。

原油高について

  • 原油価格はここ2〜3週間高止まりという状況。石油には備蓄があるので、いきなり価格が上がっても直接的な影響は出にくいが、これが続くと経済全体に影響があるかもしれない。
  • いまガソリンは120円近辺で前より少し高いが、クルマの売れ行きへの影響はあまりない。小型車が売れているが、それは小型車の性能が上がりお客様のトレンドとして受け入れられているからであり、ガソリンの価格が上がったから小型車の売れ行きが大きいわけではない。
  • 原油がコストの一部になっていない製品やサービスは世の中にあまりないので、1バレル=40ドルというのが前提条件になるとすると、そういう社会情勢で経済が安定するまで若干の影響があると思う。

リコールの件数と対象台数について

  • 件数、台数とも04年度は大変増えたが、原因のひとつは部品の共有化がかなり進み、同じ部品が違うクルマに載っているので、ひとつの部品のリコールで件数と台数が何倍かになってしまう。またクルマにコンピュータが何十台とあり複雑化しているのも事実。
  • ただ、だから増えていいとは我々は思っておらず、各社とも品質向上を第一に掲げて努力しているので、今年は件数、台数ともに減らしたい。

企業防衛について

  • 買収の危機は常にあり、経営をしている以上はそれを考慮しなければならない。最良の方策というのは、企業の価値を高めるということ。
  • 個人的な意見だが、敵対的な買収に対抗するために、ステークホルダー(株主、従業員、お客様)にとって企業の価値を高めるための買収防止策をするというのは世の中に受け入れられるのではないか。
  • M&Aにもいろいろあるが、企業価値を高めたり新しい分野に進出したりするための方策のひとつとして有効なM&Aが、あまりポジティブな印象でなくなってきている感じがあり、それはちゃんと理解されることが必要。

米国自動車市場とGM/フォードについて

  • 米国は、年間何十万人もの移民が米国籍を取り、またクルマが移動手段として必要な社会であることから、自動車市場は安定的に少しずつ伸びていく市場だと思う。
  • GM/フォードは米国の代表的な企業であり、そこの業績が米国景気に影響を与えるというのは事実であるから、一日も早く立ち直っていただきたいと思う。

鋼材について

  • 鋼材価格については、日本の場合世の中の物価が上がっておらず、上がった値段を直接お客様に転嫁するのはなかなか難しい状況なので、鉄鋼メーカー、サプライヤー、自動車メーカーが協力して知恵を出し合って吸収していくというのが基本的なスタンス。鉄鉱石の値上げがあり鉄鋼業界は大変苦しい立場だと思うが、一層の企業努力をお願いしたい。
  • 需給については、3月のピークを乗り切った。今後もタイトな状況は続くと思うが、鋼材の種類を減らして生産効率を上げるなど鉄鋼メーカーとは供給の面では大変緊密な協力関係を確立しており、これを続けていきたい。

日タイFTAについて

  • タイは、日本との補完関係において、部品や車両の輸出基地になるという可能性がある。タイの競争力のある部品を日本に入れることによって、日本も1,000万台の生産台数をキープすることができる。
  • 日本のメーカーはタイに410億バーツ、1,200億円くらいの投資計画を持っているが、日本に不利なFTAになると他へ投資をすることになりかねないので、そうならないようご配慮いただきたいとの立場でタクシン首相に説明をした。
  • タイに必要な投資をしてタイの自動車産業の発展に我々も寄与すること、これはタイのためだけでなく日本のためでもあるというのが我々のスタンスである。