JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2015年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
池 史彦


 新年明けましておめでとうございます。年頭にあたり、ご挨拶を申し上げます。

 昨年末に実施された衆議院選挙の結果は、国民のアベノミクスへの評価と、今後のさらなる成長戦略への期待の表れだと思います。一方、足元では消費増税の影響は思いのほか大きく、新政権におかれましては、景気回復の加速と経済の好循環の本格化に向けて、積極果敢に経済対策を推し進めていただくとともに、成長戦略や政権公約に掲げられた政策の迅速かつ着実な実行を期待しております。

 昨年の国内市場については、4月の消費増税に伴う消費マインドの冷え込みや、増税前の駆け込み需要の反動減により、持続的成長への試練に直面した年であったと思います。本年も軽自動車税の増税を控え厳しい状況も想定されますが、自動車業界としても魅力ある新車の投入などにより需要喚起に努めてまいります。
 また、海外市場については、一部新興国で減速があったものの、堅調な米国市場に支えられた年でした。本年は、米国市場の好調の持続や欧州市場の本格回復、新興国市場の需要拡大に期待するところですが、依然として世界経済の不透明さによる下振れリスク、国際競争の激化などが予想され、国内同様、楽観はできないものと考えております。

 日本が成長を続けていくために、これからも私ども自動車業界がけん引役として経済、社会に果たす役割は非常に大きいと考えます。
 本年も取り組むべき課題は多岐にわたりますが、業界を取り巻く環境変化を的確に捉え、以下3点を中心に積極的に取り組んでまいります。

<国内市場の活性化に向けて>

 日本の自動車産業の発展には、20年以上にわたって縮小傾向が続く国内の自動車市場を活性化することが不可欠です。
 自動車業界として、今後もより価値ある商品をお客様に提供できるよう努力を続けていくとともに、クルマ・バイクの魅力を積極的に発信してまいります。
 昨年は、「東京モーターフェス」をはじめ、「バイクの日イベント」、「大学キャンパス出張授業」などを通じて、クルマやバイクになじみのない方々にも、様々な形でクルマ・バイクの魅力を感じて頂けるよう努めてまいりました。
 本年は10月29日から「第44回東京モーターショー2015」を開催いたしますが、今回は「きっと、あなたのココロが走り出す。Your heart will race.」をショーテーマに、世界一のテクノロジーショーケースを目指し、すべてのお客様に最先端技術との心躍る出会い、感動をお届けすべく準備を進めております。

 さらに、国内市場の活性化に向けては、お客様がクルマ・バイクをお求め易い環境を整備していくことも重要です。特に諸外国と比較しても自動車ユーザーに極めて過重な負担を強いている自動車関係諸税の抜本見直しは、必ずや実現させなければなりません。
 平成27年度税制改正大綱では、足元の厳しい国内販売の状況等を勘案した形で、自動車ユーザーの負担軽減、軽自動車への軽課措置の導入、二輪車の税率引き上げ実施時期の1年間延期が決定されました。関係者のご尽力に深く感謝申し上げます。
 しかし、消費税10%時点で導入予定の環境性能課税や、過重な保有税である自動車税や自動車重量税等、車体課税の簡素化・負担軽減に向けた課題は依然として残されております。
 自動車業界といたしましては、今回の税制改正結果を十分活かしつつ市場の活性化を図っていくとともに、引き続き政府には自動車及び二輪車ユーザーの負担軽減を強く訴えてまいります。

 また二輪車においては、昨年、二輪車関係団体や地方自治体と協働でとりまとめた「二輪車産業政策ロードマップ」に掲げた、免許取得容易化や駐車場整備などの諸課題への取り組みを積極的に推進し、二輪車の利便性向上を図ってまいります。

<事業環境の改善に向けて>

 国内生産と雇用の維持に努め、日本のものづくり基盤を守っていくためには、国内の事業環境の改善が欠かせません。
 日本経済が持続的に成長するためには、産業の活性化と国際競争力の向上が不可欠です。政府が掲げた成長戦略には、法人実効税率の20%台への引き下げ、研究開発投資環境の整備、経済連携交渉の推進といった方針が盛り込まれております。
 政府におかれては、事業環境の改善や国際競争力の維持・強化に向けて、これらの方針を迅速かつ着実に実行に移されることを期待いたします。
 平成27年度税制改正大綱において、来年度から法人税の実効税率について、減税規模が代替財源を上回る形で引き下げられ、また、研究開発税制の総額型の恒久措置が維持されたことは、厳しい国際競争に晒されている我が国自動車産業の競争力強化に資するものであり、深く感謝いたします。
 また、経済連携交渉の推進については、グローバルに事業を展開する自動車業界にとって、貿易・投資の自由化と、それを支える共通したルールづくりは極めて重要であり、とりわけTPP、日-EU EPAの早期合意に向け交渉が加速されることを強く願っております。

 自動車業界としても、先進的な技術の開発、人材の育成、国際競争力の強化などによって、世界の自動車産業をリードしていくとともに、事業環境のさらなる改善へとつなげ、引き続き日本経済の再生に貢献していく所存です。

<安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造>

 安全・快適で持続可能なクルマ社会を創造していくことは、私どもにとって大きな使命です。特に、お客様にとって品質や安全は最重要関心事項であることを再認識し、昨今の大規模な品質問題に対しては、お客様からの信頼を回復するために、自動車業界をあげてこれまで以上に真摯に取り組んでいく必要があると肝に命じております。

 道路交通社会における取り組みとしては、クルマ、バイク、歩行者や自転車など、“道”を使うすべての人の安全・快適かつ自由な移動の実現を目指し、高度運転支援等の自動運転技術の導入・普及に努めてまいります。
 さらなる交通安全推進に向けて、近年、交通事故死者数の半数以上を占める高齢者への対策が喫緊の課題です。自動車業界としては、先進技術を活用した安全運転支援システムの普及やITS(高度道路交通システム)によるクルマとインフラが協調した予防安全技術の実用化に向け、一層の努力を重ねてまいります。
 また、車両安全技術の開発・普及などのハード対策のみならず、ソフト対策としての交通安全啓発活動や道路交通環境改善に向けた提言などを積極的に行い、「世界一安全な道路交通」の実現に向けて尽力いたします。

 エネルギー・環境問題については、本年開催される国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議(COP21)に先立って、各国は2020年以降の温室効果ガス削減の目標(約束草案)を提示することが求められております。このような状況の中、自動車業界としても地球温暖化抑制やエネルギーセキュリティーの確保、大気環境改善の強力なソリューションとなり得る次世代自動車の開発・普及に積極的に取り組みます。世界をリードする日本の燃料電池自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル車など次世代自動車の先進技術のみならず、従来型内燃機関のさらなる性能向上は、今後、発展途上国を中心に自動車保有台数が増加していく中、CO2排出量を低減させ持続可能なクルマ社会を創造するための鍵となります。

 また、燃料電池自動車、電気自動車の普及には、インフラの先行整備が必要なことから、関連業界と協力を図るとともに、車両普及やインフラ整備に対する一層の支援を政府に求めていきます。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、日本の未来社会の創造に繋がる様々な動きが活発化しておりますが、自動車業界においても、来る2020年という目標、さらにその先を見据えた未来のモビリティの実現に向けて、政府、自治体、関係団体・企業等と連携を図りながら着実に歩を進めてまいります。
 さらには、世界で最も安全、快適で、環境に優しい、夢のある豊かなクルマ社会の実現に向けて様々な課題に積極的に取り組んでまいります。

 本年も、皆様方の一層のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

以 上