JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2012年11月20日

国内外のエネルギー・環境政策に向けた産業界の提言(共同提言)


石油連盟   会長   木村 康
社団法人セメント協会   会長   矢尾 宏
電気事業連合会   会長   八木 誠
一般社団法人 電子情報技術産業協会   会長   中鉢 良治
一般社団法人 日本化学工業協会   会長   高橋 恭平
一般社団法人 日本ガス協会   会長   鳥原 光憲
一般社団法人 日本自動車工業会   会長   豊田 章男
日本製紙連合会   会長   芳賀 義雄
一般社団法人 日本鉄鋼連盟   会長   友野 宏

提言の骨子

  • 様々な問題がある「革新的エネルギー・環境戦略」を見直し、これを踏まえて「エネルギー基本計画」を策定し、その上で「地球温暖化対策の計画」を策定すべきと考えます。
  • したがって、COP18においても、政府は中期目標について、我が国の厳しいエネルギー事情等を説明し、新たな中期目標については、未だ確定できる状況にない点について、諸外国の理解を得るべく最大限の努力を傾注すべきです。
  • 「全ての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」に向けては、先ずは新たな枠組みの構築に消極的な途上国に対して参加を促がす具体的施策の立案・実践が重要であると考えます。

はじめに

我が国産業界は、「歴史的な円高」が続いていることに加え、低廉で安定的な電力供給の確保と云う産業競争力の基礎的条件が欠落し、熾烈な国際競争を戦う上で、極めて厳しい経営環境に晒されており、未曽有の危機に直面しております。
このような状況の下で、本年末に向けて、2013年以降の「地球温暖化対策の計画」の策定や、COP18が予定されていますが、その対応を一歩誤れば、我が国産業の空洞化の懸念や国富の流出が一段と深刻化し、国民生活や経済活動に致命的な影響を与えることは必至であります。
このような視点から産業界として、以下の点について、共同提言を行います。

1.「革新的エネルギー・環境戦略」の見直しについて

本年9月14日、政府の「エネルギー・環境会議」において、「革新的エネルギー・環境戦略」が決定されました。同戦略の策定過程で示された「地球温暖化対策の選択肢」においては、省エネの実行、再生可能エネルギーの導入、CO2削減の考え方に非現実的な前提が置かれており、その結果、いずれのシナリオも電気料金が大幅に上昇し、GDPは押し下げられ、雇用も減少するなど、我が国経済、雇用、国民生活に対して極めて大きな影響を及ぼすとの分析結果が示されています。即ち、「革新的エネルギー・環境戦略」は、経済と環境の両立を図る戦略には、ほど遠いものになっております。
更に、「革新的エネルギー・環境戦略」は、様々な矛盾を内在しており、各方面から厳しい批判がなされております。
こうした状況にもかかわらず、先般、政府が公表された、いわゆる「工程表」において、2013年以降の「地球温暖化対策の計画」を本年末までに策定するとの意向を示されたことは、全く理解できません。産業界としては、先ず「革新的エネルギー・環境戦略」を見直し、「エネルギー基本計画」を策定し、その上でエネルギー問題と表裏一体の関係にある「地球温暖化対策の計画」を策定すべきと考えます。

2.COP18における我が国中期目標の扱いについて

従来から申し上げているとおり、我が国の現行の中期目標(「90年比25%削減」)は、極めて非現実的、且つ国際的に突出した不公平な削減目標です。したがって、本来、この目標を撤回し、新たな公平且つ合理的な数値目標を提出すべきものと考えますが、上述の我が国の事情に鑑み、COP18では、先ずは、我が国が置かれた現在の厳しいエネルギー状況等を説明し、新たな中期目標については未だ確定できる状況にない点について、諸外国の理解を得るべく最大限の努力を傾注すべきと考えます。
「革新的エネルギー・環境戦略」の見直しや「エネルギー基本計画」の策定がなされないままに、「地球温暖化対策の計画」の策定が進められ、その結果、十分な検討や国民の理解の無いまま、拙速に中期目標に言及することは厳に避けるべきです。

3. 「全ての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」と産業界の役割

昨年のCOP17においては、日本政府の尽力により、日本が京都議定書第二約束期間での目標設定を回避できたことに加え、2020年以降に全ての国に適用される法的効力を有する新たな枠組み作りが合意されたことは、極めて大きな成果と高く評価します。
「全ての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」に向けては、先ずは新たな枠組みの構築に対して消極的な途上国に対して参加を促がす具体的施策の立案・実践が重要であると考えます。こうした観点から、現在、政府が推進している二国間オフセット・メカニズムについて、産業界では、これが将来的に技術移転の仕組みの構築と、実効性のある地球温暖化対策の同時達成、換言すれば経済と環境の両立に資するものとして大きな期待を寄せております。
既に一部の産業においては、民間ベースで省エネ・環境技術の国際交流を進めているほか、「エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ」(GSEP)においては、官民連携によるセクトラルアプローチも進められており、途上国においても、こうした活動を通じて、技術移転によるメリット享受への理解は一歩一歩着実に進展しております。
政府におかれては、COP18において、[1]我が国産業界が推進するプレッジ&レビューを採用した、カンクン合意に沿った各国の削減目標・行動の実施と相互のレビューの着実な実施(2020年まで)と、[2]全ての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築(2020年以降)について、議論をリードすることを期待します。

おわりに

我が国産業界は、2013年以降も、引き続き自主的な省エネ努力を行うことは勿論ですが、自らが開発し実用化した生産プロセスにおける環境・省エネ技術や、使用段階で大幅なCO2削減に貢献する様々な製品・サービスを世界に移転、普及して、地球規模で大幅なCO2排出削減に貢献し始めています。
日本政府におかれましては、我が国産業界の技術力を活用し、地球規模での温暖化対策をリードするとともに、我が国が技術立国として更に発展する経済成長と両立可能な政策を実現されるよう強く願う次第です。

以 上