JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2012年05月17日

豊田章男新会長の記者会見冒頭挨拶

日本自動車工業会
会長 豊田 章男


ご紹介いただきました豊田でございます。
先ほど、理事会におきまして、日本自動車工業会の会長を拝命いたしました。会長就任にあたり、簡単ではありますが、ひと言ご挨拶を申し上げます。

志賀前会長には、2年の任期の間、業界をあげて東日本大震災からの復旧・復興を迅速に実現されたことや、昨年の東京モーターショーを大成功に導かれたことなど、多くの場面で卓越した指導力を発揮し、自動車業界に大きく貢献していただきました。改めまして深く感謝申し上げます。

そして今、志賀さんから、第15代目となる自工会会長の「たすき」を受けとり、私は身の引き締まる思いを感じております。

思い起こしますと、この「たすき」は、自動車産業の発展に尽くされた多くの先輩方が、これまで脈々とつないできたものです。

自工会の前身となる団体が発足いたしましたのが昭和23年(1948年)。
日本全体が、戦後の復興を模索する中、「平和な日本の再建のために、自動車産業の発展が必要なのだ」、「国民生活を豊かにするために、クルマやバイクが必要なのだ」という、諸先輩の熱い思いから自工会の歴史は始まりました。

それから60年以上の年月がたちましたが、大型トラックから軽自動車、二輪車に到るまで、私たち日本の自動車メーカーがつくる大小さまざまなクルマやバイクは、お客様の生活や仕事を支え、社会にとってなくてはならないものとなりました。

私は、先輩たちがつないできた「たすき」の重さを改めて認識するとともに、自動車メーカーだけではなく、これまで自動車産業を支えていただいた多くの関係者のご努力に深く感謝申し上げたいと思います。

そして、この「たすき」を、しっかりと次の世代に引き継いでいくために、これからお話しする2つの気概を持って、自工会の活動に取り組んでまいりたいと思っています。

一つめは、「国内の自動車産業を守りぬく気概」です。

今日、日本における「ものづくり」は、6重苦と言われる厳しい環境の中にあります。現在の円高により海外への生産拠点の移管が進むなど、サプライチェーン全体が根こそぎ空洞化し、産業・雇用が崩壊する危機に瀕しております。

しかし、私は、このように厳しい時だからこそ、国内の自動車産業が、日本を元気にする、日本を笑顔にするんだ、という思いをもって、取り組まなければならないと思っています。

自工会の設立趣旨は、「わが国の自動車工業の健全な発展を図り、もって経済の発展と国民生活の向上に寄与すること」であります。
こうした先達の志と努力により、現在、自動車産業は、わが国の雇用や経済に大きく貢献できるまでに成長することができました。

私は、この志をなくしてはならないと思いますし、引き続き自動車産業が日本の雇用や経済に責任を果たしていけるよう、自工会としても、努力してまいりたいと強く思っています。

これは、決して精神論だけではありません。

私たち日本の自動車産業の強みは、日本国内に集積した素材や部品、物流などのサプライチェーンの総合力だと思います。その中でも、技術開発と生産や販売の現場が密接に連携することによって生み出されるイノベーションに特徴があると思います。

私は、これらの日本の強みは、一定の規模の国内生産があってこそ、はじめて発揮されるのだと確信しております。

国内事業を守り抜くことで、私たちの競争力の源泉を守っていく。
そして、イノベーションを通じて、厳しい国際競争に打ち克ってまいりたいと思っています。

二つめは、「世界の自動車産業をリードする気概」です。

ご承知のように、世界の自動車産業は、量的な面では、新興国を中心に今後も市場の拡大が見込まれております。また、質的な面でも、地球環境問題やエネルギー問題、あるいは交通安全の問題について、お客様や社会からのニーズが高まっております。

このように、世界の自動車産業が量的にも質的にも、まだまだ成長している今日、私は「日本の自動車産業にも、その発展をリードしていくのだ」という気概が求められていると思います。

私たちは、欧米に半世紀も遅れて自動車産業に参入し、これまで実に多くのことを学ばせてもらいました。
私は、その中でも「競争と協調」の考え方が、これからの自動車産業の発展にとって、最も大切であると思っています。

米国も欧州も、市場ではお客様のジャッジのもとに競争する一方で、業界として協調し、長い年月をかけて、豊かな自動車文化を築いてきました。
私たち日本の自動車産業も、この「競争と協調」の考え方を大切にしながら、世界の自動車産業が健全に発展し、クルマをお使いいただいている全ての国々でより良い社会づくりのお手伝いができるよう、地球環境問題やエネルギー問題、また安全・安心なモビリティー社会の構築といった世界共通のテーマについて、各国の自動車業界と協調しながら、取り組んでまいりたいと思います。

以上、会長就任にあたっての私の心構え、気概をお話いたしましたが、次に、具体的な取り組み項目についても少しお話したいと思います。

平成24年度の事業計画につきましては、「日本の『ものづくり』の維持」、「国内市場の活性化」、「安全・安心で快適なクルマ社会」の3点を事業方針として取り組んでまいります。

志賀前会長からも、重点的に取り組んで欲しいこととして、いくつか申し送りをいただきましたが、中でも、重要なのが車体課税の問題です。

現在の政府案では、2014年から段階的に消費税の増税をすることになっておりますが、自動車取得税がそのままで消費税が上がるというのは、お客様にとって大変な負担となります。自動車重量税も合わせまして、車体課税の抜本的な負担軽減に向けて、力を注いでまいりたいと思います。

次に、クルマのファンづくりについてです。おかげさまで、昨年の東京モーターショーでは、大変多くの皆様にご来場いただきました。

私も、各社のトップの皆様と一緒に、「思い出に残るクルマ」についてトークショーをやらせていただきました。
私は、日産・スカイライン、ホンダ・NSX、マツダ・コスモスポーツ、三菱・パジェロ、それからいすゞ・べレット、と挙げましたが、皆様の誰からも、トヨタのクルマを選んでいただけませんでした。いまだに、あれは悔しかったなぁと思っております。

私も会場の熱気を肌で感じまして、まだまだ多くの方にクルマを好きになっていただけるのではないかと、大変心強く感じました。

昨今、若者のクルマ離れということも言われますが、メーカー各社が切磋琢磨しながら商品開発をし、魅力あるクルマを世に出していきたいと思っておりますし、自工会といたしましても、大人の方や、クルマを知りつくしたシニアの方はもちろん、男性にも女性にも、将来ドライバーになる学生さんや、子供さんにも、多くの皆様にクルマに触れていただき、クルマの魅力、楽しさを感じていただけるような、取り組みを考えていきたいと思っています。

2013年の東京モーターショーをはじめ、これから「わくわくドキドキ」するような楽しい企画を検討してまいりたいと思っております。
ご期待いただきたいと思います。

最後に、今後の自工会の活動を通じまして、一人でも多くの方に自動車産業を応援していただけますように、私自身、日本のものづくりや自動車産業の現状につきまして、現場感覚やリアリティを大切にしながら、できる限り現地現物で足を運び、現場の生の声をお伺いしてまいりたいと思いますし、そうした声を心に届く形で皆様にお伝えしてまいりたいと思います。

ここにいらっしゃる副会長の皆様、そして会員各社や多くの関係者の皆様とともに、自動車産業の発展と「日本の元気」、「日本の笑顔」のために、努めてまいりたいと思います。

今後もご支援とご協力をお願い申し上げます。
ご清聴ありがとうございました。

以 上