JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2008年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
会長 張 富士夫

新年明けましておめでとうございます。年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

まず昨年を振り返りますと、原油価格が高騰し、年後半にはサブプライムローン問題に端を発した米国経済の先行き懸念、ドル安円高の進行などがあったものの、輸出や企業の設備投資が堅調に推移したことなどから、日本経済は、年全体としては、緩やかな成長が持続しました。

こうした経済情勢の中にありながら、昨年、四輪車の国内需要は、538万台(対前年比93.8%)と3年連続して減少し、また、二輪車は72万台(対前年比98.0%)と2年連続の減少となるなど、自動車市場を取り巻く環境は、厳しい状況が続いております。

一方、生産につきましては、好調な海外需要に支えられ、国内は6年連続で1千万台を上回り、また、海外におきましても、着実に進展する現地生産化に伴い、3年連続で1千万台を上回るなどグローバル化が進んでおり、当面こうした傾向が続いていくものと思われます。

本年を展望しますと、米国経済の先行き不透明感はあるものの、中国やインドなど新興国の経済成長の持続が見込まれ、また、企業部門の好調さが家計部門へ波及していくことも期待されるなど、総じて緩やかな景気回復が続くものと思われます。

このような中、四輪車の国内需要は532万台、二輪車の国内需要につきましては、70万台を見込んでおります。

日本の自動車産業は、我が国の基幹産業として、経済・社会の発展に貢献していくという重要な責務を担っております。そのためには、何よりも我々が活力を失わず、直面する課題に真摯に取り組み、常にたゆまぬ変革をしていく必要があります。

具体的に取り組むべき課題は多岐にわたりますが、本年は、まずは、自動車市場の早期回復に向けた「国内市場活性化への取り組み」、次に、広く社会に目を向けた「安全と環境への取り組み」、最後に「自動車産業のグローバル化への対応」の3点を事業の柱として、積極的に推進してまいります。

まず第一に、「国内市場の活性化」を喫緊の課題と位置付けております。現在の国内市場を回復し、持続的に発展させることは容易なことではありませんが、会をあげて取り組まなければならない重要な課題であります。

そのために、お客様ニーズの多様化に対応した商品の提供や情報通信等の技術を駆使した魅力あるクルマづくりに努めることはもとより、お客様がクルマに夢や楽しさを体感して頂けるような取り組みを通じ、一人でも多くの方にクルマファンになっていただけるよう努力してまいります。

また、お客様がより快適にクルマをご利用いただけるよう、道路整備やITS社会の早期実現、都市部における駐車場・駐輪場整備の推進、福祉車両の開発・普及等、利用環境の改善に資する活動に一層、注力してまいります。なお、道路特定財源の一般財源化問題につきましては、真に必要な道路整備のための中期計画等が示された一方で、1,035万名もの反対署名にもかかわらず、道路歳出を上回る税収の一般財源化、暫定税率の10年延長が政府・与党で決定されましたことは極めて遺憾であります。しかしながら、政府・与党の決定には、税制抜本改革にあわせ自動車関係諸税のあり方を検討するとの内容が記載されており、引き続き「自動車関係諸税の簡素化・軽減」の実現に向け、理解活動等を推進してまいります。

第二に「安全と環境への取り組み」についてであります。
安全につきましては、政府が掲げる「世界一安全な道路交通」の実現に向けて協力しつつ、今後も更なる安全技術の開発・普及促進、広報・啓発活動の推進など、ハード・ソフトの両面にわたって最大限の努力を果たす所存です。
特に、依然として装着率が低い「後席シートベルトの着用促進」、二輪車乗員への「ヘルメットの正しい着用」、「飲酒運転の撲滅」について交通安全キャンペーンなどを通じて呼びかけていくとともに、高齢運転者の運転能力の向上に資する取り組み等についても検討してまいります。

環境につきましては、とりわけ、地球温暖化防止への取り組みを最重要課題と捉えています。京都議定書の目標達成に向けて、低燃費化の技術開発を一層進めるとともに、CO2排出の少ない次世代自動車の技術開発を協調と競争によって加速してまいります。また、ポスト京都議定書の枠組みづくりにも積極的に協力してまいります。
なお、今夏開催されます北海道洞爺湖サミットにおける「環境ショーケース」構想に対しましては、最先端の環境技術を備えた自動車の展示等、積極的に協力してまいります。

第三に、「自動車産業のグローバル化への対応」についてであります。
世界各国でビジネスを展開する自動車産業にとって、貿易や投資に関するビジネス環境の整備は極めて重要であります。WTOの多国間協定や二国間あるいは地域間の経済連携協定の推進に大いに期待を寄せており、相手方政府や業界への働きかけなど、日本政府の活動を支援してまいります。特に、EUとの経済連携協定につきましては、日・EU双方で民間による研究会が設立されたところであり、今後、政府間協議に発展することを期待しております。
また、偽造品等、知的財産権侵害問題は、世界中に拡大し、深刻化しております。当会としても、専門の委員会を新設し、日本政府や関係機関等とも連携して、関係方面への働きかけ等を行ってまいります。

最後になりますが、本年も、お客様や関係先の皆様方の言葉に真摯に耳を傾け、会員各社の協力の下、幅広い事業活動の展開を通じて、経済・社会の発展に寄与していく所存ですので、今後とも、関係各位の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

以 上