JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2006年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
会長 小枝 至

新年明けましておめでとうございます。年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、年前半は、円高や原油価格高騰などの懸念材料から景気回復の勢いがやや鈍化したものの、年半ば以降は雇用・所得環境の改善や好調な企業収益により個人消費、設備投資等が底堅く推移するなど、景気の先行きに対する明るさが広がった感がありました。

こうした中で、昨年の国内総需要については、各社が積極的に新型車やモデルチェンジ車を投入したことなどにより、四輪車が590万台(対前年比100.8%)と3年連続でプラスとなり、二輪車も74万台(対前年比101.0%)と3年ぶりに前年を上回りました。
本年につきましては、原油価格や為替の動向は不透明なものの、全体としては米国やアジアを中心に世界経済の成長が続くと予想され、日本経済も雇用や所得環境の改善等によりプラス成長を持続すると見込まれることから、四輪車の国内需要は593万台、二輪車については
73万台を見込んでおります。

さて、近年、日本の自動車市場は600万台を若干下回る水準で推移してきたことから、国内市場だけで自動車産業をとらえた場合、成熟産業であるとの印象を持たれがちですが、米国・欧州などの主要市場に加え、東南アジアやいわゆるBRICsと呼ばれる国々などに代表される新たな地域で自動車市場が成長していることや、わが国自動車メーカーによる海外自動車生産台数が1,000万台レベルにおよぶことなどからも、世界的に見ると大きな成長産業であることがご理解いただけると思います。
こうした状況の中で、わが国の自動車産業がグローバルな競争に打ち勝ち、持続的な成長を遂げていくためには、品質への要求が最も厳しいと言われる日本国内において、技術競争力の向上やものづくりの優位性を保つなど確固たる産業基盤を整備することが重要であります。そのためには、日本国内での生産規模を一定量確保することが重要であり、国内で1,000万台程度の生産を確保することは、自動車産業としての技術やノウハウを蓄積していくためには欠かせないと考えています。

当会といたしましては、製造業の原点である「ものづくり」の重要性を再認識し、お客様のニーズに応えつつ、高品質で魅力ある商品を提供するとともに、社会的な責務を果たすため、本年も環境・安全への対応をはじめとした諸活動を推進してまいります。

自動車業界では、低燃費車やクリーンエネルギー車の積極的な導入など、燃費のさらなる向上をめざして懸命な努力を続けてまいりました。この結果、運輸部門におけるCO2排出量は、物流改善の効果と相俟って2年連続して減少するなど着実に成果を挙げております。
今後も、引き続き、さらなる燃費向上努力や新たな燃費基準の議論に積極的に参加するとともに、燃料電池車をはじめ環境への配慮を最優先にした自動車の開発努力や、普及のための提言活動などの取り組みを加速させてまいります。
また、ディーゼル車の排出ガス低減技術の開発・普及による大気環境のさらなる改善に取り組んでまいります。

なお、昨年1月にスタートした自動車リサイクルシステムは、関係者の方々の多大なご努力のお陰をもちまして順調に稼動しております。今後も、自動車リサイクル促進センターへの連携・支援とあわせて、自動車メーカーとしてリサイクルしやすい自動車の設計・開発に取り組むなど循環型社会の実現に貢献してまいる所存です。

一方、わが国の交通事故の状況を見ますと、ここ数年、交通事故死者数等は減少しておりますが、交通事故を減らす努力は今後も継続していかねばなりません。当会は、2003年1月に政府が掲げた「今後10年間で交通事故死者数を半減させる」との目標達成に最大限の貢献することを表明しておりますが、今後も車両安全装備の拡充や先進安全自動車(ASV)新技術の実用化などに加えて、より安全な交通環境整備への調査・提言や広報啓発活動の推進など、安全なクルマ社会の実現をめざした取り組みを進めてまいります。

さらに、グローバルなビジネスを展開する自動車業界にとって、貿易や投資に関する共通ルールの策定をはじめとする国際的なビジネス環境の整備は極めて重要であります。
このため当会では、WTOの多国間協定やそれを補完するものとして経済連携協定の推進を強く支持してまいります。
また、自動車産業がグローバル化する中、基準の国際調和の推進をはじめ、燃料品質や排出ガス対策等の環境への対応、安全への対応、知的財産権の保護など各国に共通した課題は多岐にわたっております。このため、各国政府への働きかけを続けるとともに、日米欧の首脳が参加するグローバルミーティングの機会等をとらえて、課題に対する認識の共有化をはかってまいります。

自動車関係諸税については、その仕組みが複雑で非常にわかりづらく、欧米諸国と比較しても極めて重い負担になっています。当会では、自動車関係諸税の簡素化・軽減の実現に向けて様々な取り組みを進めてまいりました。

こうした中、昨年、道路整備促進のため設けられた道路特定財源の一般財源化に関する基本方針が政府・与党において取りまとめられました。そもそも道路特定財源は、道路整備のために、「受益と負担」の観点から自動車ユーザーに課している税であり、しかも、道路整備の緊急性に鑑み、本則税率の約2倍の暫定税率が課されています。従って、まずは全額を道路整備に充当すべきでありますが、どうしても財源が余るのであれば、暫定税率を廃止して、納税者に還元すべきものであります。道路特定財源の一般財源化は納税者である自動車ユーザーの声を無視した行為であり、到底、容認できるものではありません。

当会といたしましては、引き続き、納税者である自動車ユーザーの立場に立って、ユーザーが納得できる自動車税制のあり方について積極的に提言してまいります。

なお、昨年の第39回東京モーターショーは、目標来場者数の150万人を達成することができました。次回は、2007年秋に世界五大ショーの中で唯一の大型商用車も含めた「新総合ショー」として開催いたしますが、東京モーターショー50年の歴史で培ってきた経験を基に、コンパクトな展示ながらも最大の情報発信力を持つショーをめざして、その開催準備を進めてまいります。

最後になりますが、当会は「お客様や社会にとって役立つことは何か」を常に念頭に置いた事業活動の推進に努め、社会への貢献を果たしてまいる所存ですので、今後とも関係各位の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

以 上