JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2005年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
会長 小枝 至

新年明けましておめでとうございます。平成17年の年頭にあたり、ごあいさつを申し上げます。

昨年を振り返りますと、前半は、生産・輸出の増加や企業収益の大幅な改善がみられるなど、景気は順調に回復に向かうものと思われましたが、半ば以降は、原油価格の高騰をはじめ、ドル安基調が続く為替相場や伸び悩む株価の動向などの不安材料が重なり、景気の先行きに対する懸念が払拭しきれないまま推移した感があります。

こうした経済状況の中で、昨年の国内総需要は各社の積極的な新型車の投入もあり、四輪車が583万台(対前年比100%)と3年振りにプラスとなった前年とほぼ同じ水準となりました。また、二輪車は72万7千台(対前年比91.3%)となりました。
本年については、米国やアジアを中心に世界経済の堅調な推移が期待され、日本経済もプラス成長を維持するものと思われることから、四輪車の国内需要は587万台、二輪車は71万2千台を見込んでおります。しかしながら、原油・為替動向に対する不透明要素は当面続くものと思われ、決して自動車業界を取り巻く環境は楽観的なものではないと認識しています。

自動車産業は、日本を代表する産業として、わが国経済・社会の発展に貢献していくという重要な責任を担っております。
自動車業界といたしましては、新型車の投入など市場活性化策を積極的に推進し、需要の本格的な回復に努めてまいります。

昨年春、当会では安全と環境への取り組みを最重要課題とし、交通安全対策や大気環境改善、地球温暖化防止といった諸課題を解決し、安全で環境への負荷の少ないクルマ社会を実現させるために必要な施策『豊かなクルマ社会の実現に向けて』をとりまとめ、公表いたしました。
自動車は、人や物の移動手段として、あるいは人々の暮らしを豊かにする手段として社会・経済の発展に大きな役割を果たしてまいりましたが、一方で社会に対する負荷を与えてきた面があります。私どもは、こうした負荷を限りなくゼロに近づけ、クルマが人や自然とより良い形で共生できる社会の実現を目指し、「交通安全」や「環境保全」に向けた取り組みを加速させていきます。

交通の安全を確保し、交通事故のない社会を実現することは、私ども自動車業界としての願いであります。
当会では、一昨年政府が掲げた、今後10年間で交通事故死者数を半減させるとの目標に、最大限貢献することとしております。このため、従来から進めてきた交通安全啓発や車両の安全対策の充実に加えて、今後はITS技術を効果的に活用して「ひと・クルマ・道路」が一体となった総合的な交通安全社会を構築するための環境整備に努めるなど、交通事故のない社会の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

地球温暖化防止と大気環境改善は、喫緊に取り組まなければならない課題であります。
自動車業界といたしましては、自動車の燃費向上はもとより、クリーンエネルギー車や燃料電池車など、新技術を採用した環境に優しい自動車の開発・普及促進に一層努めてまいります。
排出ガス対策に関しては、引き続き新長期規制への対応などを進めてまいります。
また、地球温暖化防止には、自動車単体の燃費改善対策に加え、燃料関連施策や物流効率化・交通流対策などに関する施策を総合的に推進することが不可欠であります。こうした関連分野におけるさまざまな施策の提案や評価を通じ、CO2削減に向けた取り組みを進めてまいります。

本年は、自動車業界におけるリサイクルへの対応が大きな転機を迎える年であります。
わが国では、資源の有効利用を促進し、環境への負荷をできる限り低減する循環型社会の実現を目指した取り組みが行われており、自動車業界においても中心的な役割を果たすべき立場としてリサイクルシステムの具現化に努めてまいりました。その集大成とも言える自動車リサイクル法が新年の幕開けとともにスタートいたしました。当面はシステムの円滑な運用がはかられるよう全力で取り組むとともに、引き続きリサイクルしやすい自動車の設計・開発等にも努めてまいりますが、同法の円滑な実施にあたっては関連事業者や国および地方自治体、そしてリサイクル料金を負担していただく自動車ユーザーの方々のご理解・ご協力が不可欠であり、改めてお願い申し上げます。

一方、世界各国で生産や販売を展開しているわが国自動車メーカーにとって、貿易や投資ルールといった国際的なビジネス環境の整備は極めて重要であります。
当会は、WTO体制における多角的貿易や投資の自由化を補完し、自由貿易を推進するFTA締結の動きが加速されることは、産業界のみならず消費者に対しても多くの利益をもたらすことから、大いに歓迎するものであります。
シンガポール、メキシコ、フィリピンに続く、タイ、マレーシア、韓国などとのFTA締結に向けた協議について、当会として強くこれを支持し、推進してまいります。

当会は、本年3月に開幕する「2005年日本国際博覧会<愛・地球博>」に、国際博覧会史上初めて50m級の観覧車を演出装置として使用するパビリオン『ワンダーホイール展・覧・車』を出展いたします。
また、10月には「第39回東京モーターショー―乗用車・二輪車―(2005年)」を開催いたします。従来からの、「お客様参加・体験型」のコンセプトを継続するとともに、今回は、東京モーターショー誕生50年を記念した多彩な特別企画を提供するなど、お客様にご満足いただけるモーターショーになるよう取り組んでまいりますので、是非多くの方々に会場にお越しいただきたいと思います。

なお、昨年、リコールにかかわる問題が発生したことに鑑み、政府の再発防止対策に協力しつつ、改めてリコール業務の適正な実施を徹底いたします。当会としては、新たな年を迎えるにあたり、「お客様や社会にとって役立つことは何か」を常に念頭に置きつつ、製造業の原点に立ち、より安全で、安心してお使いいただける商品の提供に努めてまいります。

また、自動車ユーザーの過重な負担となっている「自動車関係諸税の簡素化・軽減」に向け、引き続き一般国民に対し啓発活動を展開していくとともに、道路特定財源や自動車税制のあり方についても、積極的に提言してまいります。

最後に、本年も会員各社の協力のもと、迅速な意思決定と効率的な組織運営に努めてまいる所存ですので、今後とも関係各位の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

以 上