JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2002年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
会長  奥田  碩

 新年明けましておめでとうございます。平成14年の年頭に当たりまして、ごあいさつを申し上げます。

 昨年の日本経済は、バブル後の長期低迷から抜け出せないところに、米国景気の減速や同時多発テロ事件などの影響などが重なり、先行きに明るさを見出せないまま、デフレによる閉塞感、金融システムや雇用への不安感等、むしろ不透明感のみが広がる結果となりました。新たな百年のスタートの年としては、誠に残念なことでしたが、一方で、行財政、公共事業、社会保障等あらゆる方面で構造改革がようやく具体的な形を見せ始めました。まだ多様な価値観が渾然としている中で、わが国の輝かしい将来を見越すまでには至りませんが、少なくとも中長期的には、あるべき方向に向けて歩き始めているのではないかと前向きに評価したいと思います。

 さて、昨年の国内の四輪車市場は、足下の景気が思わしくないなかで、各社の積極的な新商品投入に支えられ、ほぼ前年並みの592万台(前年比99.3%)となりました。本年の市場見通しにつきましては、二年連続のマイナス成長が想定されるなど、引き続き厳しい経済環境が続くものの、代替母体の増加や新商品効果などからほぼ前年並みの588万台といたしましたが、私どもといたしましては商品・技術開発等の面で更なる努力をすることはもちろん、税制面での支援や規制の緩和等、市場の活性化に資する政策を政府に働きかける等、一刻も早く市場に活力が戻るよう努めてまいりたいと考えています。

 また、昨年の国内の二輪車市場は77.4万台(前年比94.3%)となりましたが、今年は低価格車、大型スクーター等の新商品効果や代替需要の顕在化なども予想されるため、81.2万台を見込んでおります。

 このように業界を取り巻く環境は今年も予断を許しませんが、自動車産業は日本の基幹業界として経済再生のリード役を果たすことが期待されますし、またクルマ社会の担い手として、人々に夢を与える存在であり続けなければなりません。

 取り組むべき課題は多岐にわたりますが、私は少なくとも今後5年から10年を見据えて、この21世紀初頭という時期を捉えること、また地域的には常にグローバルな視野で事象を把握することが重要ではないかと考えております。その上で、国際競争に生き残り、経済への貢献、ユーザー・社会からの期待等をすべて満足させて、産業として持続可能な発展の途を探るということが私たちの活動には求められるのではないでしょうか。

 環境問題への対応は、今年も最重要課題の1つです。地球環境及び地域環境の改善のために、自動車業界は、燃費・排ガス性能の向上、燃料電池車や低公害車の開発・車種拡大に一層の努力を傾注して参ります。こうした取り組みは日本に技術を蓄積し、日本車の国際競争力の向上にも直結します。また、循環型社会形成に向けての取り組みについて、当面は、フロンの回収・処理や自動車リサイクル法(仮称)への対応を行い、わが国の状況に適合した国際的にも優れたシステムを目指して、関係者と相携え努力して参りたいと思います。

 また産業のグローバル化が加速する中で、国際的な共通ルールの確立も急がれます。昨年11月にWTO閣僚会議が開催され、貿易・投資に関する今後数年間の国際的な枠組み合意ができましたが、これは国際社会が共通の目的に向かって1つのルールを作ろうとする象徴的な動きです。自動車についても、国際的に自由で公正なビジネスを通じて、世界の自動車ユーザーに便益をもたらすことができるよう、基準・認証制度の国際調和、アジアへの技術及び人的支援など、海外の政府や業界団体等との対話を推進していきたいと考えております。

 一方、国内の課題としては、道路整備とその財源等、自動車税制を取り巻く環境が大きく変わりつつある中で、簡素で公平・中立、環境・国際調和の観点から、自動車関係諸税の適正化に積極的に取り組んでいきたいと考えております。また、クルマの進化、利用環境の改善といった観点から、ITSの推進、車両安全対策等の交通安全、車両盗難対策の推進、福祉車両の普及促進等に、またビジネスインフラ整備の観点から、業界共通の電子商取り引きネットワークの整備推進に引き続き取り組んで参りたいと考えております。

 さて、当会は本年1月から新たに日本ゼネラルモーターズを会員に迎えました。また5月には自動車工業振興会および自動車産業経営者連盟との統合を実現いたします。この変革期に既成概念や古い慣習にとらわれることなく、その時どきにおけるベストな組織や運営を追求していきたいと考えております。

 最後になりますが、本年も会員各社間の協力のもと幅広い事業活動の展開を通じて、社会・経済の発展に寄与していく所存ですので、関係各位の一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。