JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2004年01月01日

年頭に際して

日本自動車工業会
会長  宗国 旨英

新年明けましておめでとうございます。平成16年の年頭にあたりまして、ごあいさつを申し上げます。

昨年を振り返りますと、円高、SARSや冷夏の影響、高失業率から個人消費が低調に推移するなど不安定な経済状況が続きましたが、一方で株価の回復や設備投資の増加など明るい兆しが見えてきたように思われます。

こうした経済状況の中、昨年の国内四輪車市場は、各社の新型車投入や大型トラックの販売好調などにより、585万台、前年比101%と3年ぶりに増加に転じました。一方輸出は欧州やアジア向け輸出の好調などにより、475万台、同101%となりました。また二輪車は、国内販売79.8万台、輸出123万台となりました。

次に本年を見通しますと、わが国の経済は株価情勢や為替など不透明要素があるものの、堅調な米国景気や設備投資、個人消費など底堅く推移するものと思われます。このような状況から国内需要は四輪車が590万台、二輪車は80万台を見込んでおります。

わが国の経済状況は若干の明るさが見えるものの、自動車業界を取り巻く環境は厳しい状況であることに変わりがありません。私どもは「ものづくり産業」の立場からお客様に魅力ある商品を提供し、ニーズに的確に応えることによりこれからも持続的に成長できる産業であると確信を持っているところであります。

第一に「より環境に優しく、より安全なクルマづくり」への取り組みを強化・加速することが重要であると考えます。
環境・安全問題への対応は、わが国の自動車産業が今後とも持続的に成長し、日本の自動車メーカーがグローバルな厳しい競争の中で世界に伍していくためには、不可欠であります。昨年5月に自工会としての当面の方針である「環境・安全への今後の取り組み」を提示させて戴きましたが、本年はさらに明確な目標を設定しその目標の実現に向けた取り組みを具体化・加速させて参りたいと考えております。
環境問題は、自動車業界のみならず社会の重要課題であり、とりわけ地球温暖化防止や大気環境の改善は喫緊の課題です。自動車業界は引き続き燃費向上や排出ガス低減に向けた低燃費・低公害車の開発・普及や燃料電池車の実用化促進、自動車用燃料の改善等に努力を傾注して参ります。特にディーゼル車の排出ガスに関しては、新長期規制への対応に積極的な努力をして参ります。また来年1月から本格施行される自動車リサイクル法への対応についても、関係団体・行政機関と連携して、その社会システムの構築に向けた取り組みに努力を傾注することとしております。
一方、安全問題に関しては、交通事故死者数でみるとピーク時(昭和45年)の半減を達成するなど減少傾向にあります。交通安全対策は「ひと・クルマ・道路環境」それぞれの立場から総合的な対策が必要ですが、自動車業界と致しましては車両安全対策の更なる推進を図るとともに交通安全思想の啓発など総合的な交通安全対策に努めて参ります。政府が掲げる「今後10年間で交通事故死者数を半減させ、世界一安全な国」の実現に向けて最大限貢献致したく考えております。

第二に「自動車産業のグローバル化とその進展への対応」であります。
わが国自動車メーカー各社は、現在世界各国で約1,200万台を販売し、約770万台は海外で生産を行っております。自動車ビジネスにはすでに国境が無いと申し上げても過言ではありません。このようにグローバル化した自動車産業にとっては国際的なビジネス環境の整備が極めて重要であります。
特に、貿易や投資ルールに関して、WTO新ラウンドが難航している中、欧米を含め多くの国がFTAによる競争環境の整備を志向しております。政府においても韓国やアセアン3カ国とのFTA締結に向けた交渉開始に合意されるなど、FTA締結に向けた動きが活発化しております。自動車工業会は、FTAによる自由化の推進を最大限サポート致します。一方成長著しい中国とは本年より「日中自動車産業発展官民対話」が開始される予定であります。自動車業界としましてはFTA締結に向けた活動や日中自動車発展官民対話に積極的に参画し、日中韓さらには東アジア全体を視野に入れた建設的な関係の構築に貢献していきたいと考えます。
また世界の自動車産業としては、共通に直面する環境・安全問題に対応するため、日米欧の業界首脳が集まりグローバルCEOミーテイングを開催しております。昨年の東京モーターショーにおける第2回乗用車グローバルミーティングに続き、今秋は「第2回大型車グローバルミーティング」が開催されます。このような機会をとらえて各国業界団体や外国政府との交流を一層充実させ、相互理解の促進を図って参ります。 

第三に「より快適で、楽しいクルマの利用環境」への取り組みが重要であります。
わが国における自動車保有台数は7700万台に達し、世界有数の自動車大国でありますが、その利用環境の改善に向けた様々な課題があるように思います。自動車ユーザーの過重な税負担の簡素・軽減を引き続き訴えるとともに、道路整備および自動車税制のあり方等にも積極的に提言して参ります。またIT社会がもたらす様々なサービス、例えばETCの普及やカーテレマティクスの推進、福祉車両の開発・普及、二輪車AT免許の導入や障害者免許の緩和要望、併せて車両盗難対策なども積極的に推進して、お客様に快適なカーライフを提供していきたいと考えます。
さらに今秋開催致します「第38回東京モーターショー―働くくるまと福祉車両―(2004年)」や平成17年に開催される「愛・地球博」などの機会を通じて、様々なクルマの楽しさを提案していけるよう準備を進めて参ります。

当会を含めた自動車関連諸団体は新春より事務所を集約し、「日本自動車会館」として新たなスタートを切ることとなりました。これを機に自工会と致しましても自動車関連の方々との交流の場として活用し、また各自動車関連団体間との連携をさらに強化し、自動車産業の発展に寄与したいと考えます。

最後となりますが、会員各社の協力のもと、迅速な意思決定と透明かつ効率的な運営に努めて参る所存ですので、今後とも関係各位の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。 

以 上