JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

会長コメント  2003年01月01日

年 頭 に 際 し て

日本自動車工業会
会長  宗国 旨英

新年、明けましておめでとうございます。年頭に当たりまして、所感の一端を申し上げます。

さて、昨年のわが国経済は、消費支出や企業の設備投資の低迷が続く中でデフレが進行し、なかなか先行きに明るさが見出せない状況が続く結果となりました。一方で特殊法人改革や経済構造改革、デフレ総合対策など景気回復に向けた諸施策が示され、一筋の光が差してきたように思えます。

こうした経済状況の中、昨年の国内四輪車市場は、581万台、前年比98.4%とわずかに減少致しましたが、輸出は堅調な北米市場、経済発展の著しい中国を中心としたアジア市場の成長により、449万台、107.7%と増加し、国内生産では1,025万台、104.8%と、1000万台を回復致しました。また二輪車は、国内販売81万台、102.0%、輸出142万台、90.0%により、生産は206万台、88.7%となりました。(2002年11月末時点推測値)

次に本年を見通しますと、米国景気に先行き不透明感があると同時に、日本でも消費支出や企業の設備投資が伸び悩むなど経済全体はなお不透明な状況が続くものと思われます。しかしながら、政府による補正予算の投入や一層の金融緩和策等により、経済は低水準ながらもプラス成長が期待されることなどから、国内需要は四輪車が585万台、二輪車は82.1万台を見込んでおります。

このように、わが国の経済および自動車業界を取り巻く状況は厳しいものですが、自動車産業は製造・販売をはじめ資材・整備など広範な関連産業を持つ総合産業であり、日本経済・雇用に与える影響は大きなものがあります。基幹産業である自動車産業が活力を失わず、率先して日本経済回復のリード役を果たすためにも直面する様々な課題に積極的に取り組み、21世紀も持続的に発展し続けるべく邁進していくことが重要だと考えます。

自動車業界が取り組むべく課題は多岐にわたりますが、何がお客様にとって便益をもたらすのか、お客様の視点に立ち、自動車メーカー自らが高いハードルを課し、目標達成に向けてお互いに切磋琢磨していくことが重要です。

こうした中で、まず取り組むべき課題は「環境・安全など技術の進歩を通じた社会への貢献」です。
環境問題については、引き続き地球環境および地域環境の改善に向けて、燃費や排出ガス性能の向上、フロン回収システムの円滑な運用による温暖化ガスの排出低減、燃料電池車や低燃費・低公害車の開発・普及に向けた車種拡大を図るとともに、燃料品質や交通流の改善など行政・関係業界との連携に努めて参ります。特にディーゼル車の排出ガスに関しては、本年実施される新短期規制や東京都環境確保条例などに対応し、新技術・新車投入を積極的に進めてまいります。また2005年1月までに開始が予定されている自動車リサイクル法に対して、円滑に制度が開始できるよう行政機関・関係団体と協力し、システム構築とその運用を積極的に推進して参ります。安全問題に関しても、ITS(高度道路交通システム)やASV(先進安全自動車)などを活用した車両の安全性能の向上に努めるとともに、併せて交通安全思想の啓発による総合的な交通安全対策に努めて参ります。

次に「自動車産業のグローバル化への対応」であります。
ご承知の通り自動車は国際商品であり、世界中のお客様の要望に即座に対応できるよう、積極的に海外展開を進めて参りました。このように産業・商品のグローバル化が進展していく中で、共通基盤の確立や認定ルールの調和など、自動車メーカー各社が世界中どこででも活動をしやすい環境を作っていくことも重要です。WTOや二国間FTAなど貿易・投資に関するルール作りや自動車技術の基準・認証制度の国際調和活動に積極的に参画し、世界中のお客様に便益をもたらすことができるよう努力して参ります。とりわけ、中国はWTO加盟を機に国内関連法規や制度を整備しつつあり、今後ビジネス環境は急激に変化することが予想されます。自工会中国事務所を開設することにより、中国との建設的な関係の構築を推進して参ります。また今秋の東京モーターショー開催時には、昨年に続き「グローバルミーティング」を開催し、日米欧の自動車メーカー首脳が一堂に会します。このような機会をとらえて各国業界団体や外国政府との交流を一層充実させ、相互理解の促進を図って参ります。 

さらに「豊かなクルマ社会の実現」を目指し、お客様が車をより快適に、楽しくご利用戴けるよう利用環境の改善に努めて参ります。
現在自動車ユーザーの皆様は、複雑で難解かつ過重な税の負担を強いられています。簡素で公平・中立、環境・国際調和を目指した自動車税制のあり方を提案するとともに、道路など交通環境整備に向けた調査・提言活動、福祉車輌やノンステップバスの普及、ETC(自動料金支払いシステム)の普及、車両盗難対策なども積極的に推進して参りたいと考えております。また、現在検討されている自動車保有に必要な諸手続きのワンストップサービス導入など政府や関係業界と連携・協力して推進して参ります。

また、自動車ならびに自動車産業に関する一層のご理解を戴く上で、今秋「いま、挑む心。Challenge & Change―希望、そして確信へ―」をテーマに開催致します第37回東京モーターショー―乗用車・二輪車―(2003年)を通じた様々な情報発信やインターネット・ホームページ、自動車図書館などを利用した広報活動の充実・強化に取り組むことも重要です。

最後になりますが、当会は昨年5月に自動車工業振興会および自動車産業経営者連盟との統合を実現し、新たなスタートを切ることができました。統合によりこれまで以上に幅広く事業活動を展開していくこととなりますが、会員各社の協力のもと迅速な意思決定、透明かつ効率的な運営に努めて参りますので、今後とも関係各位の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

以 上