JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2002年12月19日

世界主要自動車産業界による燃料品質に関する提言(WWFC)第3版

 日本自動車工業会(JAMA)は、この度、米国自動車工業会(Alliance−AAM)、欧州自動車製造者協会(ACEA)および米国エンジン製造者協会(EMA)と共同して、「The World-Wide Fuel Charter−WWFC*1」の第3版(完成版)を取りまとめた。燃料品質の世界的統一に向けた議論は1995年から開始され、1998年に議論の結果をWWFC第1版として発表、2000年には世界の排出ガス規制の動向および自動車技術の進展を勘案したWWFC第2版を発表しており、この度第3版を取りまとめ発表するものである。

 WWFCは、大気環境改善のための自動車排出ガス低減技術に向けた自動車業界の努力を前提に、大気環境改善のための望ましい燃料品質を、世界の排出ガス規制のレベルに応じて、4つのカテゴリー*2に分けて提言している。

 今回の第3版では、燃料品質の各種項目について見直しを行い、燃料品質の各種項目の許容値を定めるための基礎資料を、最新の研究データに更新した。主として次のような点について改訂が行われた。

  1. カテゴリー1の国・地域におけるガソリン中の鉛の含有*3について、従来は、有鉛ガソリンでは0.05〜0.40g/lを推奨していたものを、主として発展途上国の国民健康被害に配慮して鉛分の含有(有鉛ガソリン)を認めないこととした。
  2. 軽油中の植物油エステル*4の含有について、従来はカテゴリー1および2については5%まで認めていたが、植物起源エステルの燃料への混合使用の世界的動向を考慮して、カテゴリー3まで許容することとした。ただし、混合用の植物油起源エステルが規格に合致していること、また、混合後の軽油規格が、各カテゴリーの推奨値を満足していることを必要とする。

 WWFCで推奨している燃料品質の各種項目のうち、燃料中の硫黄分*5の推奨値の例は以下のとおりである。

  カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4
Gasoline 1000ppm 200ppm 30ppm Free*6
Diesel 3000ppm 300ppm 30ppm Free

以 上

<用語の説明>

  1. WWFC(World Wide Fuel Charter−世界燃料憲章)
    自動車ユーザの要求、排出ガス制御技術を考慮した、世界共通の適正品質燃料の推奨規格。この規格は、日本自動車工業会(JAMA:14社)、米国自動車工業会(Alliance−AAM:13社)、欧州自動車製造者協会(ACEA:12社)、米国エンジン製造者協会(EMA:27社)が中心に議論して作成。この活動の準会員として、国際自動車工業会(AIAM)、カナダ輸入車協会(AIAMC)、メキシコ自動車工業会(AMIA)、ブラジル自動車・農耕用車両製造者協会(ANFAVEA)、カナダ自動車工業会(CVMA)、フィリピン自動車会議所(CAMPI)、中国自動車工業協会(CAAM)、韓国自動車工業協会(KAMA)、南アフリカ自動車工業会(NAAMSA)、タイ自動車工業会(TAIA)が、賛助会員として国際自動車工業連合会(OICA)が参加している。
  2. 4つのカテゴリー
    排出ガス規制のレベルにより、以下の4つのカテゴリーに分類し、それぞれのレベルに応じた燃料品質を規定。
    • カテゴリー1:最低限の排ガス制御技術が要求される市場(排出ガス規制がないか、もしくは触媒を必要としないレベル)。
    • カテゴリー2:より進んだ排ガス制御技術が要求される市場(米国のTier0〜Tier1またはEuro1〜Euro2相当)。
    • カテゴリー3:先進の排ガス制御技術が要求される市場(LEV/ULEV、Euro3〜Euro4相当)。
    • カテゴリー4:最先端の排ガス制御技術及び高度なNOx、PM後処理システムが要求される市場(LEV2/Tier2、Euro4+燃費要求相当)。
  3. ガソリン中の鉛
    WWFC第3版では、燃料添加剤である鉛分が許可されている地域も含めて、ガソリン中の鉛分を完全になくすよう勧告している。自動車メーカーは、遅くとも2005年までの、なるべく早期に世界規模で燃料中の鉛が除去されるべきであると勧告する。過去のWWFCでは、排出ガス規制がないか、最低限の要求しかない市場では、鉛の意図しない微量の存在や、法的に有鉛ガソリンが認められている地域については容認してきた。世界のおよそ50カ国で、いまだにガソリン中の鉛の使用が許されている。
    鉛は大気を汚染し、排出ガス制御システムを被毒させる金属系添加剤である。したがって、有鉛ガソリンは、排出ガスを90パーセントまたはそれ以上低減すことができる自動車用触媒導入の障壁となる。有鉛ガソリンは、同時に自動車技術の世界的調和を妨げる。世界中の自動車メーカーは、ガソリン中の鉛の使用を終結させるための努力を強く支持する。
    鉛はガソリンのオクタン価を増加させるのに使われる。 鉛を減少したり、除去した国では、他の Methyl cyclopentadienyl Manganese Tribonyl(通称MMT)や鉄のような、金属系オクタン価向上剤が用いられることがあるが、WWFC第3版では、自動車の触媒システムを害するため、いかなる金属系添加剤の使用も推奨していない。
  4. 植物油エステル
    菜種油・大豆油等の植物から抽出した油脂分とエタノールを反応(エステル化反応)させて合成。欧米では、その性状に関する規格化が進められている。排出ガスへの影響は、含酸素燃料であることからスモーク低減効果は期待できるが、燃料性状の幅が広いことから、効果も変動する。ゴム材への影響等、耐久面から多くの問題点が指摘されており、燃料性状確保と同時にエンジン側での対応の可否についても事前に十分な検討が必要。
  5. 燃料中の硫黄分
    ガソリン中の硫黄分が多いと、排出ガスを浄化する触媒に硫黄が付着し、触媒の性能を低下させる。また、軽油中の硫黄分が多いと、排出ガス中の粒子状物質(PM)を増加させ、酸化触媒の寿命を低下させる。
  6. Free
    原油から精製されるガソリンや軽油の硫黄分を完全に除去するのは技術的に難易度が高く、概ね 5〜10ppm以下がFreeと考えられる。