JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2017年04月10日

2016年度普通トラック市場調査の概要

1.調査実施概要

 

ユーザー調査

調査地域

全国

調査対象

普通トラック保有事業所(軽・小型トラック併有事業所を含む)

調査方法

郵送法

サンプリング

運輸業

建設業、製造業、卸・小売業

企業・事業所リストより運輸業
該当企業としてランダムに抽出

普通トラック保有企業リストより抽出

有効回収数

786サンプル

340サンプル

調査実施期間

2016年8月下旬〜10月上旬


 

荷主調査

調査地域

全国

調査対象

建設業、製造業、卸・小売業

調査方法

郵送法

サンプリング

従業員100人以上の事務所をランダム抽出

有効回収数

322サンプル

調査実施期間

2016年8月下旬〜10月上旬

2.調査結果概要

[経営状況]

  • 前回に比べ勢いはやや鈍化したものの、景気回復を背景に好況を維持。
    • 調査結果からは、前回より勢いは鈍化したものの経営状況の改善が見られた。荷主企業は『好転』が『悪化』を上回り、「原材料価格の低下」による製造業の好調などが好況維持の要因に挙げられる。一方で、『好転』の内訳では「良くなっている」の割合が減り「やや良くなっている」が増え、やや陰りが見られた。荷主企業の業績好調の要因の中で「景気の好転」が前回に比べ30ポイント以上減っており、景気好転の影響が減ったことが背景にあると考えられる。
    • 運輸業では『好転』が前回に比べ6ポイント減少したものの好況を維持。輸送コストの低減に加え、稼働率向上や業務の効率化などの運輸業の経営努力が運輸業の好況維持の背景にあるとうかがえる。
    • 2020年開催の東京オリンピックに関連した経営状況については、荷主企業においては、製造業は 2019年、卸・小売業は2020年が需要のピークと回答。
    • 運輸業においては、2018年・2019年が東京オリンピック関連の輸送量増加のピークと回答。
      地域によるばらつきが見られるが、関東圏を中心に期待が高まる。

[需要動向]

  • 国内全体の総輸送量は減少傾向が続くが、普通トラックの新車需要および保有台数は回復基調。
    事業所ごとの保有台数計画も大規模事業所を中心に高い購入意欲を維持。
    • 国土交通省の交通関連統計資料および自動車輸送統計調査年報によると、国内貨物の輸送量については、輸送トン数は2008年度以降、輸送トンキロは2010年度以降、ともに低水準が続いている。
    • トラック輸送についても、輸送トン数は減少傾向だが、輸送トン数構成比における営業用トラックの比率は10年間で10%増えており、自営転換が進んだといえる。
    • 国内貨物輸送量は全体としては縮小傾向にあるが、普通トラックの新車登録台数は、2009年を底に順調に増加し、2016年は9.5万台にまで回復した。普通トラック保有台数も2012年を底に増加傾向が続いている。
    • 調査結果によると、運輸業の事業所ごとのトラック保有台数の増減は、過去2年間および今後1年間の見込みでは「増加」が「減少」を上回った。5年後の保有状況については、前回に比べ「増加」が減少し「変わらない」が増加した。前回と比較すると、全体では減少傾向となったものの、大規模事業所や経営状況が好転した事業所では、依然として高い購入意向を示している。
       注:新車需要および新車登録台数は、暦年(1月〜12月)の台数について表記。

[稼働状況]

  • 実車率は前回並みだが、稼働時間や稼働日数は前々回(2012年度)の水準に戻る。
    • 調査結果によると、運輸業における積載率や月間走行距離はやや減少傾向が続き、これは、輸送トンキロ推移でも同様の傾向がみられている。一方で、実車率は前回並みを維持となっているが、1日当たりの稼働時間や月間稼働日数は、前回は高まったが今回は前々回の水準に戻った。稼働 時間・日数の減少は、各種規制の強化や人手不足解消に向けたドライバーの労働環境改善の影響が考えられる。
    • 普通トラックの稼働状況については、運輸業では、「手持ちの車では足りないくらい忙しい」もしくは「手持ちの車がほぼフル稼働している」が前回と比べてほぼ同水準。保有台数6台以上の中堅事業所での稼働率好転が見られた。

[ドライバー確保状況と今後の見込み]

  • 構造的な労働力不足に加えて、2007年の免許制度改正の影響もあり、運輸業の「ドライバーの不足」と「ドライバーの高齢化」がさらに進行。2017年3月開始の「準中型免許制度」導入への期待か、5年後見込みは前回に比べ不足感がやや軽減した。
    • 少子高齢化の進行、景気回復と有効求人倍率の増加などを背景に、労働力不足は全産業における課題となったが、その中でも運輸業のドライバー不足は深刻である。2007年の免許制度改正後、普通免許では2トンクラスの車両も車両総重量5トンを超えると運転できなくなったことや5トン以上を運転するのに必要な中型免許は免許取得後2年を経過するまで取得できなかったことにより、ドライバーの不足と高齢化が進んだ。これらに対応するため「準中型免許制度」が2017年3月から開始され、18歳以上であれば運転経験がなくても取得できるため、若手を中心とするドライバー不足解消の糸口として期待されている。
    • 現時点の事業所全体のドライバー確保状況は、運輸業の約3割が「不足」と回答。特に大型・中型免許クラスでの不足が深刻である。5年後の見込みでは、約4割が「不足」と回答しており、今後に対する不安は強い。一方で、5年後見込みの「不足」の割合は、前回に比べると10ポイント減少しており、「準中型免許」導入への期待の現われとも考えられる。
    • トラック輸送上の問題点においては、運輸業で上位2位に挙がった「ドライバー不足」と「ドライバーの高齢化」は前回より10ポイント前後増加しており、足元での人手不足は年々深刻化しているといえる。
    • 荷主側にもドライバー不足の影響が出始めており、「委託先運輸業者のドライバー不足を感じることがある」と回答した荷主企業が前回より増加。具体的には「若手のドライバーが少ない」「仕事を頼めないことがあった」「ドライバーの質が落ちた」などが上位に挙がり、人手不足とドライバーの高齢化が荷主側でも顕在化している。
    • 特に人手不足感の強い大型・中型免許クラスのドライバー不足の解消が目下の課題といえるが、1日あたりの労働時間が特に長いのも10トン・トラクタ等の大型クラスである。
    • 運輸業者はドライバー確保の取り組みを本格的に始めており、前回に比べて「労働時間の適正化」「給与の引上げ」「資格取得の支援」「休暇制度の充実」などの根本的な対策を実施する事業所が増えている。加えて募集方法の工夫や募集条件の緩和など、人材確保のための様々な試みを行っている。

[安全対策への取り組み]

  • 運輸業は、「バックアイカメラ」や「ドライブレコーダー」をはじめとする安全サポート機器の導入が進む。荷主側でも「ドライブレコーダー」装着の要望が高まる。
    • ドライバーの長時間労働や高齢化の進行により、健康に起因した事故増加が懸念される中で、運輸業者は、運行管理の徹底や、社内教育、安全サポート機器の導入など、各種の対策を実施している。国交省は、運輸業者と荷主や元請運送事業者の適正取引の推進や事故削減を目指して、荷主勧告制度の強化や書面化推進ガイドライン導入などを実施。荷主側も発注先の運輸業者の事故の責任を問われることになった。
    • これらを背景に、運輸業における安全サポート機器の導入状況では、「バックアイカメラ」、「ドライブレコーダー」が最も多く、その他では、「定速走行車間距離制御装置」や「車間距離警報装置」、「衝突被害軽減ブレーキ」が前回に比べて増加した。荷主企業の安全サポート機器の認知率および運輸業者に使用してほしい機器では「ドライブレコーダー」が1位に挙がった。
    • 今後の技術進展については、実現されていない技術の中で今後の導入意向(運輸業)が高かったのが「ドライバー異常時対応システム」、「全周囲モニター」などであった。

[自動運転走行機能]

  • 自動運転走行機能のメリットは「事故の減少」と「ドライバー不足の解消」が上位に挙がる。
    • 自動運転走行機能がトラックで実用化された場合のメリットとしては、「事故の減少」が最も多く挙げられた。次いで、運輸業では「ドライバー不足の解消」が2位に挙がり、ドライバー不足解消の一助としても実用化に期待がかかっていることがうかがえる。
    • 一方、「システムの故障・誤作動による事故」や「故障・事故発生時の対応や責任の所在」などが、自動運転走行機能が実用化された場合不安に思うことに挙げられた。

以 上

2016年度 普通トラック市場動向調査(PDF:2.32MB)


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