JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2015年04月09日

2014年度普通トラック市場調査の概要

1.調査実施概要

 

ユーザー調査

調査地域

全国

調査対象

普通トラック保有事業所(軽・小型トラック併有事業所を含む)

調査方法

郵送法

サンプリング

運輸業

建設業、製造業、卸・小売業

企業・事業所リストより運輸業
該当企業としてランダムに抽出

普通トラック保有企業リストより抽出

有効回収数

882サンプル

387サンプル

調査実施期間

2014年8月下旬〜10月上旬


 

荷主調査

調査地域

全国

調査対象

建設業、製造業、卸・小売業

調査方法

郵送法

サンプリング

従業員100人以上の事務所をランダム抽出

有効回収数

332サンプル

調査実施期間

2014年8月下旬〜10月上旬

2.調査結果概要

<経営状況>
景気回復を背景に荷主企業の経営状況に好転がみられ、運輸業へ波及。2008年以降、好転の兆しを見せていたが、2014年は大きく改善。

  • 調査結果からは、経営状況の改善が見られた。荷主企業は、建設業、製造業の順に好転し、最近の経営状況は「好転」(47%)が「悪化」(24%)を上回り、リーマンショック前の水準に戻った(図6-1)。荷主企業の経営状況改善の要因は「景気の好転」が1位にあがった(図6-4)。
    今後についても、東京オリンピック開催による需要増も期待され、荷主企業は2018〜2020年をピークに、経営に明るい見通しがうかがえた(図6-2)。
  • 運輸業においても、2008年から2012年にかけ「悪化」の割合が減り続け徐々に好転の兆しが見られていたが、荷主企業の好調を受け、2014年は前回調査時(2012年)に比べ「好転」(30%)が12ポイント増、「悪化」(41%)が10ポイント減と大きく改善した(図6-1)。
  • 2013年頃からの景気回復を背景とする経営状況の改善が荷主側でより強く実感され、それが、運輸業に波及している状況がうかがえる。

<需要動向>
2009年を底に新車需要は増加。2014年は消費税率引き上げによる駆け込みと反落あり。普通トラック保有台数も2012年を底に回復基調。

  • 国土交通省の交通関連統計資料および自動車輸送統計調査年報によると、国内貨物の輸送量については、輸送トン数は2008年度以降、輸送トンキロは2010年度以降、ともに低水準が続いている(図1-1、1-2)。
  • しかし、普通トラックの新車登録台数は2009年を底に毎年増加している。これは、景気回復や旺盛な建設需要等を受けて、過去の経済停滞で減少し続けたトラック保有を回復しようとする動きによるものと思われる。2014年は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要と反落が発生(図1-5)。
  • 調査結果から、運輸業の約2割、自家用の約1割が、消費税率引き上げ前のトラック前倒し購入を実施。運輸業、自家用ともに保有台数の多い事業所ほど、前倒し購入の実施率が高い(図4-16)。
  • 事業所ごとのトラック保有台数の増減については、過去2年間の実績および1年後と5年後の見込みのいずれにおいても、「増加」が「減少」を上回り、前回調査時に比べても「増加」の割合が増えている。特に、保有台数30台以上の事業所では、半数近くが過去2年間で保有台数が増えていると回答、今後1年間についても3割が増やすと回答しており、大規模事業所を中心に購買意欲の高さが感じられる(図4-9)。

<稼働状況>
実車率は前回並みだが、稼働時間や稼働日数は上昇。使用年数の長期化が続く。

  • 調査結果によると、積載率(運輸業(以下同)2012年度86.2%→2014年度84.1%)や月間走行距離(2012年度7,176km→2014年度6,986km)はやや減少傾向にあり(図3-2、3-10)、これは、輸送トンキロ推移でも同様の傾向がみられている(図1-2)。一方で、実車率(2012年度66%→2014年度66%)は前回並みを維持となっているが(図3-3)、1日当たりの稼働時間(2012年度9.2時間→2014年度9.5時間)や月間稼働日数(2012年度22.1日→2014年度22.5日)ではやや上昇の傾向がみられ、ドライバー不足への影響が懸念される(図3-8、3-9)。
  • 普通トラックの稼働状況は、「手持ちの車では足りない位忙しい」もしくは「手持ちの車全体がほぼフル稼働している」が計43%と、前回に比べ7ポイント増加。特に保有台数の多い事業所で稼働率があがった(図4-7)。遊休車両も「増えている」と「減っている」がほぼ均衡し、改善がみられる(図4-8)。これらの動きと並行して、運輸業者は「ドライバー教育(マナーや服装の向上)」(54%)や「輸送品質の向上」(39%)に積極的に取り組み、品質アップにより仕事量を積極的に拡大し稼働率を上げていることもうかがえる(図7-20)。
  • 一方、代替え年数は依然長期化の傾向がみられ(2012年度10.8年→2014年度11.0年)、今後、車両費用の負担軽減を考慮してメンテナンス関連の需要が高まる可能性も考えられる(図4-5)。

<燃料費の節減への取り組み>
トラック輸送上の問題点の第1位は、燃料価格高騰を背景に「燃料費の値上がり」。
トラック購入時重視点では、依然として「燃費のよさ」が1位となり重要性が高い。
運輸業者は、デジタルタコグラフの活用やドライバー教育、燃料の共同購入などで対応。

  • 2014年秋以降、原油価格の下落が続いているが、長期的視点で見ると最安値時を上回っており、 運輸業者の負担はそれほど軽くなった訳ではない。2004年以降、継続して「燃料費の値上がり」がトラック輸送上の問題点の1位にあがっており、「燃料費高騰」は長年にわたる懸念事項である。今回調査でも、燃料価格の上昇を背景に「燃料費の値上がり」が突出して高く、運輸業(86%)、自家用(81%)両方で、トラック輸送上の問題点の1位にあがった(図7-1)。
  • 次期買い換え時の購入重視点でも、1位に「燃費のよさ」があがり(図4-11)、半数以上が買い替え時にカタログ燃費値を重視する(図7-32)など、「燃費のよさ」はトラック購入時の重要なポイントとなっている。燃料価格が為替や国際情勢によって変動する不安定な状況が続き、環境意識も高まる中で、今後も引き続き「燃費のよさ」は重視されると思われる。
  • 燃料高騰に対する対応として、運輸業は荷主企業へ「現行の運賃値上げ」(50%)や「輸送条件の見直し」(26%)などを試みており、荷主側の受入率は50%弱である(図7-15)。
  • 荷主企業も、現在、運輸業へ指定している環境対策の1位に「エコドライブの実践」(22%)があがり、今後、指定したいことの1位に「低燃費車両の導入」(14%)があがるなど、環境対策の面からも重要性が増している(図7-31)。
  • このような状況の中、運輸業では、ハード面では、「低燃費車両の導入」(31%)、「デジタルタコグラフ装着」(27%)、ソフト面では、「ドライバー教育」(57%)、「エコドライブの推進」(48%)などの省燃費対策や(図7-29)、「燃料の共同購入による経費削減」(25%)などの合理化策の実施という形で燃料費節減への対応を実施している(図7-20)。

<ドライバー確保状況と今後の見込み>
構造的な労働力不足に加えて、2007年の免許制度改正の影響もあり、運輸業の「ドライバーの不足」と「ドライバーの高齢化」が急激に進行。5年後も人手不足がさらに深刻化する見通しの中、運輸事業者は効果的な解決策を模索していることがうかがえる。

  • 2007年の免許制度改正後、大型免許合格者の大幅な減少や、普通免許では2トンクラスの車両も車両総重量5トンを超えると運転できなくなったことなどが原因で、ドライバーの不足と高齢化が進んだ。これらを解決するため、18歳で取得できる免許を車両総重量5トン未満から 7.5トン未満へ引き上げることも検討されている。
  • これらの状況を受け、調査結果では、現時点の事業所全体のドライバー確保状況は、運輸業の約3割が不足と回答。免許クラスでは「普通免許」以外での不足が多い(図7-3?)。さらに、5年後は、運輸業の全体の50%がドライバーが不足する見込みである(図7-3?)。トラック輸送上の問題点でも、運輸業では「運転手不足」(48%)、「運転手の高齢化」(40%)が、2位、3位に浮上し、人手不足は喫緊の課題である(図7-1)。
  • 荷主側にもドライバー不足の影響が出始めており、荷主企業の3割が「委託先運輸業者のドライバー不足を感じることがある」と回答(図7-5)。具体的には「仕事を頼めないことがあった」が1位にあがり、繁忙期には仕事を断らざるを得ないほど人手不足が深刻化している状況がうかがえる(図7-6)。
  • ドライバー確保が厳しい中、運輸業の1日当たりの稼働時間は2012年度に比べて増えており、特に10トンクラス、トラクタでは、「11時間以上」が3割を超えた(図3-8)。運輸業者は、「労働時間の適正化」(40%)、「ドライバー募集方法の工夫」(33%)などを行い(図7-4)、今後は「女性ドライバーの活用」(19%)や「パートタイムドライバーの活用」(17%)等の人材活用も予定しており(図7-20)、ドライバー不足の解消に努めている。

<安全対策への取り組み>
運輸業は、テレマティクスやドライブレコーダーをはじめとする安全サポート機器の設置が進む。荷主企業も、安全サポート機器の認知率や委託先への安全サポート機器の設置の要望が上昇し、安全対策についての意識の高まりがみられる。

  • 大型トレーラー横転事故やドライバーの健康面や過労などによる交通事故が相次ぐ中、国交省 は、交通事故防止のための法案(「乗務前の酒気帯び確認」や「自動車運転死傷行為処罰法」や「衝突被害軽減ブレーキの導入義務化」)などを相次いで実施している。
  • このような状況を受けて、運輸業においては、安全サポート機器の導入が進んだ。特に、2012年度に比べ飛躍的に増加したのが、「テレマティクス」(54%)と「ドライブレコーダー」 (40%)。その他にも「バックアイカメラ」(54%)、「デジタルタコグラフ」(34%)が上位にあがった(図7-8)。大型車から順次装着が義務付けられる「衝突被害軽減ブレーキ」については、運輸業全体で41%が「積極的に導入したいと思う」と回答、大規模事業所ほど高い導入意向を示した(図7-14)。
  • 荷主側の無理な要求に対しても責任を問う「荷主勧告制度」なども法令化。安全運転に対する荷主企業の責任意識も高まりを見せた。荷主対象の調査結果では、運輸業者に設置してほしい安全サポート機器は「ドライブレコーダー」が20%から46%へ、「ふらつき警報(居眠り防止装置)」が31%から42%へ、「アルコール・インターロック」が25%から38%へ上昇した(図7-10)。各機器の認知率も前回調査時に比べて軒並み増えており、メーカーサイドの技術開発の進展と、安全対策への荷主企業も含めた全体的な関心の高まりが見られる。

以 上

2014年度 普通トラック市場動向調査(PDF:2.00MB)


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