JAMA 一般社団法人日本自動車工業会 
 

ニュースリリース- 2009年04月08日

2008年度乗用車市場動向調査の概要

1.調査実施概要

調査研究構成 調査研究方法
文献調査
□調査対象 オープンデータ分析
  -官公庁統計資料
-新聞・雑誌
-若者の動向に関する文献
□調査時期   2008年6〜10月
グループインタビュー調査
□調査対象 現大学生(4年生大学、短大)男女
  4グループ計20名
大都市(東京)
地方都市(宇都宮)
  クルマ高関心 クルマ中関心
大都市 G1(男4・女2) G1(男2・女2)
地方都市 G1(男4・女2) G1(男4・女2)
□調査時期   2008年9月12日〜9月25日  
Web質問紙調査
□調査対象 全国18〜49歳男女個人 1600s
 
-現大学生 (現18-24歳:大学、短大生)
-以前の大学生 (現20-39歳:大学院、大学卒)
-以前の大学生 (現40-59歳:大学卒)
1000s
300s
300s
□調査時期   2008年11月12日〜11月14日  

2.調査結果概要

(1) エントリー世代が育った時代環境

  • バブル崩壊後の低成長期に育ち、好景気を実感することなく過ごしてきたため、将来の社会・経済に対して悲観的な見方をする傾向が強い。学校では、ゆとり教育により授業数が減り、絶対評価により他者との競争を意識する機会が少なかったことが窺え、家庭では、親と仲がよく、生まれた頃から、様々な機器に囲まれ、家の中で遊んできた傾向がみられる。

(2) エントリー世代の生活価値観と行動

  • 努力するより無理をしない生き方・仕事スタイルを志向する傾向が以前の大学生と比べて強い。将来の不透明感や、無理をしない価値観を反映して、以前の大学生と比べてお金を使うことに消極的であり、トレンドや他人の持ち物に興味を持つ人が減っている。行動面ではスポーツ・レジャーなど身体を動かすことや、休日に外出する機会が少なく、新しい出会いよりも、昔からの友人や同性の友人との継続的な人間関係を大切にしている傾向がみられる

(3) エントリー世代にとってのクルマ

  • 免許取得意向は以前と変化はみられない。クルマの使い方をみると、親の車(共用車)を使う人が増え、家族と乗る機会が増えている。クルマの用途は、買い物が増え、余暇・通学が減少している。クルマへの関心は、以前と変わらずあるものの、強い関心を持つ人は減っている。同様に、クルマへの購入意向は以前と変わらず高いものの、購入への強い気持ちが低下し、購入時期については慎重な姿勢がみられる。クルマの購入意欲の障害要因としては、維持費など経済的負担感と免許取得など時間的・労力的負担感が大きい。

(4) エントリー世代のクルマ体験とボディタイプの選好

  • 幼い頃にミニバン、1BOXでのレジャー・アウトドア体験が多く、クルマに楽しい想い出を持っている。現在のボディタイプ選好はコンパクトタイプが好まれており、セダンやスポーツカーにおいても、ポジティブなイメージも持たれている。現在のクルマの使用状況だけでなく、幼い頃の乗車体験や体験を通じた想い出が、その後のクルマ関心やボディタイプの好みに影響することが確認された。

(5) 他財(他の製品・サービスなど)との比較からみたクルマ

  • 幼い頃から多くのモノに囲まれ、興味・関心のある領域が広がり、情報通信機器やコンテンツ(アニメ・ゲーム等)など、クルマ以外にベネフィットを感じる他財が出てきた結果、クルマへの関心が相対的に低下している。クルマのイメージは、生活を便利に快適にするものとして、他財では得られない機能的ベネフィットがイメージされ、顕示性・所有満足など心理的なベネフィットが弱くなる傾向がみられた。

(6) クルマ購入を阻害する要因とクルマニーズの広がり

  • クルマの購入に対する強い気持ちが、以前の大学生と比べて低下しているのは、[1]「クルマに感じるベネフィットの薄れ」、[2]「地球環境への社会に対する負担意識の高まり」、[3]「コストや労力などの障害の高まり」の3つが原因と考えられる。ただ、クルマに関心を持つ層は半数で決して低くはなく、クルマの新たな機能・性能に対するニーズを持っており、これらのニーズに応えた商品が潜在需要を顕在化させるものと考えられる。

(7) 総括

  • クルマの関心度・購入意向をみると、大都市に住む男性で「クルマ離れ」が進んでいるものの、女性や地方居住者は関心度・購入意向ともに高く、結果としてクルマへの関心度・購入意向は以前の大学生と比べて同水準であった。しかしながら、強い購入意向に結びつかないのは、クルマに対する『負担』が、クルマを通じて得られる『効用』を上回っているからと捉えられる。
  • クルマの『効用』の変化をみると、ゲーム・携帯電話・パソコンが普及し屋内で遊ぶことが多く、移動せずいつでもコミュニケーションがとれる環境への変化により、クルマの使用機会が減っていること。競争機会が少なく、自己表現せず、他人との差異化を気にしないため、クルマの所有価値が低下したこと。周りにモノがあふれクルマ以外にも魅力的に映る製品・サービスが多くなったことからクルマの相対的な魅力が弱まっていることであり、その結果、クルマに感じる『効用』が以前よりも小さくなったと考えられる。
  • クルマの『負担』の変化をみると、経済低迷期に育ったため保守的な価値観・行動をとるようになり、環境負担や事故などのリスクを気にするようになったこと、製品・サービスの増加により、クルマにかけられるお金が制約されるようになったことから、『負担』の意識が高まったと考えられる。
  • エントリー世代に対しては、利便性を中心に「情報化」「自動化」「環境性能向上」などクルマの『効用』を高度化するとともに、経済的、労力的な『負担』を減らしていくことが大切である。『負担』を減らしていくためには、自動車関連諸税の軽減、免許取得手続きの簡素化、交通インフラの高度化などが効果的であると思われる。

2008年度乗用車市場動向調査報告書(PDF:1.63MB)

以 上


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